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霧雨堂の女中(ウェイトレス)

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駄目だ。
私はそう思い、天を仰いだ。
霧雨堂の従業員として、これ以上お客さんに迷惑をかけるわけにはいかない。
でもお店にのこのこ出て行くわけにも行かない。
だからぎりぎりの折衷策として私は

「はあい」

と二階から大きめの声で返事をすることにした。

「ああ、上にいらしたんですね?お会計をお願いしたいんですが。次の予定がありまして」
優しそうな声が戸惑い気味の声音を帯びてそう告げた。
『やっぱり』と私は思う。
「すみません、マスターが不在だとしたらご迷惑をおかけします。でも私もちょっと応対が出来なくて・・・」
私はそう相手に告げた。
「もしかして伏せっておいでなんですか?声がかすれ気味だ」
階下のヒトはそう言った。
声音が優しい。それは明らかに私を慮る声だった。
「すみません、そのとおりです。咳が出て熱があったものでさっき病院に行ってたんですけど、インフルエンザB型らしくて」
その声音に導かれるように私はそう答えた。
すると、わずかな沈黙がそこに流れた。
困っているのかな、と私は思った。
次の用事があるのに、お会計が出来なくて、立ち寄った喫茶店から出るに出られない。
申し訳なさ過ぎて私は伏して謝りたくなった。
だけど、