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霧雨堂の女中(ウェイトレス)

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ここしばらく霧雨堂は閑古鳥だ。
お客さんが目に見えて減っている。
漠然と何やら世間には病気がはやっていると聞いているが、ケータイもガラケーならテレビもラジオも持たない私は世の情報にとんと疎い。
だからこそ自分がインフルに罹患した時には本当に驚いた。
そもそも、買い物にだって必要がなければ行かないし、引きこもりを気取るわけではないけど漠然と古本を読んで過ごすばかりの日々が続いていたので、人と接した覚えがあまりないからだ。
マスターは元気だし、あの様子なら私に媒介したとは考えづらい。
ともあれ、そうした事情で私は床に伏せっている。
こうした状況も久しぶりで、正直なところ持て余すのだけれど、でも直るまではマスターと顔を合わせるわけにも行かない。
そんな私のかろうじての娯楽というか、楽しみはマスターが流してくれる音楽だけだ。
で、階下から響くのは最近はもっぱらピアノ曲だった。
管楽器は確かに響きが堅いし、何というか、病んだ鼓膜には刺さりそうな気がしていたので、その意味ではマスターには感謝だった。
でもそんな中でさらに耳を澄ませていても、お店のドアが開く音はほとんど聞いていない。
そのようなわけで私は何となく胸が痛くなる。
病気のせいではなく、自分がよりどころにしているお店に(もともと少ないにしても、さらに)活気がないことが、そこに勤めるウェイトレスの身としては、やはり言いがたく辛いものがあるからだ。
――――暑いような寒いような――――。
布団を着ていても、重ねるべきか薄く剥ぐべきか、自分でもよく分からない。
ああ、と寝返りをうちながら片足を布団から出してその上に巻き付ける。
すると、