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霧雨堂の女中(ウェイトレス)

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声と女中と霧雨堂



「うん・・・うん・・・分かった。それじゃまたね−−お母さん」

私はスマホから乗り換えたガラケーの『通話』ボタンを軽く押し込むと、少しうつむきながら軽く息をついた。
昼下がりは陰になる霧雨堂の二階で、私は借りている部屋の壁に背をもたれかけさせ、閉じられたガラス窓の向こうに目をやった。
そこでは今日も霧雨がもやのように町を包み込んでおり、まるで私の漠然とした憂鬱な気分をそのまま画にしたかのように見えた。
今日の『霧雨堂』はお休み。
このお店は、基本的には火曜日が定休日なのである。
そこで『お昼ご飯に』と自分で用意したサンドイッチと、金色のラベルが目印のインスタントコーヒー(インスタントをバカにする人もいるけれど、個人的にこの銘柄は嫌いではないのだ)を飲みながら、ふと一息ついた時のことだった。
最近はもっぱら時間を確認するほかには使うことがなかった私の携帯電話が着信メロディを鳴らした。
古いイギリスのポップバンドが作った軽快なその音楽は、私に電話の相手が誰であるか液晶画面で確認する前に理解させた。
指定されたそのメロディは私の家族から、もっと言えば、私のお母さんからに他ならなかった。