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霧雨堂の女中(ウェイトレス)

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まあ、なんというか、不遇とか不運とか、そう言う言葉で自分を語りたくはない。
きっとそれは良くある出来事で、聞く人が聞けば鼻で笑う内容で、知人に話したなら悲しげな眼差しと一緒に「嗚呼、大変だったね」なあんてひとことを添えられて終わるか、「大丈夫!次があるよ!」なんて無責任な言葉をかけられるか。
大体においてその二つの一つで、間違いないのだろう。
気にすることもない。
傷はいつか癒えるし、記憶はいつかそれを風化させる。
そんなことは理屈では分かっていても、『今現在の自分』をそれで完全に納得させることが出来るのかといえば、当然遠く及ばない。
ガタン、という振動で体が揺さぶられ、ぼんやりして半ば眠りかけてすらいた頭が覚醒した。
私は、電車に乗っている。
行き先なんて分からない。
適当に切符を買って、適当に電車に乗って、適当にどこかへ向かっているだけだから。
駅について料金が足りなかったら精算をする。
それがもしも無人駅だったら――

まあ、何とかする。

私は、ふと辺りを見渡した。
二両編成の電車の中には、気がつけばいつの間にか私一人しか乗っていなかった。
私は、傷心のまま当てもなく出かけたマヌケに過ぎないのだ。
私を振ったオトコは、よりにもよって12月23日に、別の女の存在を私に告げた。
しかも、スマホのメールでだ。

まあ、ナメている。

でも、考えようによっては私もなめられる程度の女だったのだろう。
大学生になるまでオトコと付き合ったこともなく、初めて付き合ったのが彼で、色んな初めてを彼と経験して、そして、私はきっと彼にとっては
――きっと退屈で面白味のないオモチャだったに違いない。