霧雨堂の女中(ウェイトレス)
目の前の馬鹿ふたりを睨み付けて、勢いのままそう啖呵を切った。
すると、男はきょとんとした子供のような表情を浮かべた。
それこそ、直前までいたずらをしていたくせに、いざ大人に見つかってみると、一瞬自分が何に怒られているのか分からなかった子供のような。
そしてその次の瞬間、私の目の前でこの男は、
「わ。はは。はははははっ!」
何かがひどく痛快といった様子で、
まるで映画でしか見ないような大仰さで、
――途方もない大声で、突然豪快に笑い出した。
作品名:霧雨堂の女中(ウェイトレス) 作家名:匿川 名