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霧雨堂の女中(ウェイトレス)

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――気まずい。

ちらりと目をやると、私の視線はこの男性の視線とがっちりかち合った。
というか、向こうがこっちをまじまじと見つめていた。
でも、なんといえばいいのか、

その視線は言い様もなく素朴で、邪気を感じなかった。

だから視線が合ったときも、驚きはしたけど、嫌な気分がしなかった。
何だか自然にそうなったような。
不躾による失礼、非礼、欠礼。
たとえばそうした概念が、初めからそこにはまるで無かったかのような。

「――似とるのう、うん。似とる」

そして男はそう言うと、何かがどこか懐かしげに優しく目を細めた。
だから私は思わず聞きかけた。
『一体私が誰に似ているのだろうか』と。

そして私は口を開いて、
最初の一音がすうっとそこから飛び出す寸前で、

「はい、そこまで」

とマスターが私たちの間に割って入った。
そして、男と向き合うと両手を顔の横にぐいっと掲げて見せた。
そこに掴まれているのは――
なんと、一升瓶だった。