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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  8話  『春斗覚醒』

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「ぎゃわぁぁああああッ!!」

痛みのあまり握りつぶされた手を押さえる魔獣者。
砕け散ったその手を春斗の血にまみれたその手の中にあるのを確認すると、見せ付けるかのように魔獣者に差し出した。

「おっと悪い悪い。つい力が入りすぎてしまったようだ。ホント悪いことをしてしまったなぁ。それじゃもうその手は使いもんにならないな」

ヒナちゃんは悪びれた様子はなく、不敵に微笑んでいた。

「ぐぅぅう…お、おのれ…!!」

「痛いか?そうか、痛いよなぁ。それじゃ、お詫びに我から痛みをなくすおまじないをかけてやろう。本来は惨たらしく一つ一つパーツを引き千切ってバラッバラにしてやろうと思っていたのだが、せめてもの慈悲だ、感謝するんだな??」

そう言うとヒナちゃんは、もう片方の手を魔獣者に向けて手をかざす。

「ぐぅう…ま、待てッ!!」

魔獣者は、助けを乞うかのような眼差しでヒナちゃんを見据える。
しかし、ヒナちゃんはにやりと微笑んで、手に魔力を集中させ、そして、眩く強力な魔力で手が輝きだす。

「二度と悪さの出来ぬように粉々にしてやろう。あははははははッ!!これは餞別だッ!!!死の世界へのなッ!!!ありがたくとっときやがれッ!!…じゃあなッ!!!!!」

その瞬間、ヒナちゃんの手からもの凄い魔力の光線が放たれた。

「うぼぉおうぇえああ!!」

魔獣者はそれによって跡形もなく吹き飛んでしまうのだった。

「…な、なんていう力なの」

ヒナちゃんにこんな力が隠されていただなんて…。
この前のヒーちゃんの時よりも凄い力だ。これが、鍵の力なの…。
しかし、この力は危険だ。魔力だけじゃない、ヒナちゃんにとっても。
これだけの力、制御も出来ていない、いや出来るはずがない。

今まで普通の人間として生活してきたヒナちゃんでは到底無理な話だ。
それにこの前から気になってはいたが、この力が発動するとヒナちゃんであって、ヒナちゃんではない何者かに意識を支配されているようだ。私の憶測でしかないが、力を多様すればするだけヒナちゃんは身を滅ぼしかねない。

そんな気がする。
現に、力を制御出来ないヒナちゃんは暴走し、意識を奪われ、バーサーカーのように何もかもその溢れん力で破壊尽くしてしまっている。これが続くようであればヒナちゃんが危ない。
人格も身も乗っ取られ、ヒナちゃんを救う術がなくなってしまう。
そんなことはさせない。させたくない。

大切な、とっても大切なヒトを奪われてたまるものか。
だから、私が止める。私が何とかしなければならない。
今、私にできるのはそんなことくらいしか思いつかないが、でも、間違ってはいない。
ヒナちゃんは私が守ってみせる。もしも暴走化してしまったら、私がヒナちゃんを…。

私は、そのようなことを考えながら呆然とヒナちゃんを見つめ、その場に立ち尽くしていた。
すると、さっきまでヒナちゃんの身体全体を覆っていた光がゆっくりと消え始めてきた。
そして、完全に光が消えた途端、ヒナちゃんはがくっと身体が傾いてそのまま倒れてしまった。

「ヒ、ヒナちゃんっ!!」

私は、急いでヒナちゃんのところに駆け寄るのだった。

<次回へ続く>