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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  7話  『魔獣者』

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「いいかい、よく聞くんだよ☆ミナタンはすっごく人見知りがハゲシク、今懐いてるのは春斗ただ一人。なんか人見知りなヒロインってヒジョーに萌えない??なんかさ、もしそれが懐かれたらこの上ない感動モノだよネ☆考えてもみなよ☆ちょこちょこ小動物みたいな反応で誰にも懐かなかったあの娘が自分にだけ心を開いて心を通わすような発展が到来してごらん☆考えただけであたしは悶死寸前だよ☆」

「相変わらず凄い想像力豊かな発想転換だな。でも、それは大いにアリだな。だが、それがミナちゃんと仲良くなるために何の関係があるんだ??」

「いいかい、暁。敵を知るにはまずは情報だ☆つまりミナタンは敵なんだ。敵を倒すにはそのステータスを知る必要がある」

「なるほど。確かにそうだな」

いや、ミナは敵じゃないから。100%優しさ配合の味方だ。
そうだな、敵というのに相応しいのはヒカリただ1人。あの高笑いに冷徹な瞳はまさに悪役にぴったりだ。

さらに、かえではなぜかにんまり笑顔になる。

「ってことで、暁。ちょっと耳をかせ。極秘事項であるだけに外部に洩れるのは危険だ」

ちょいちょいと暁を手でこ招くと、それに従って暁はかえでに耳をかす。
そして、ゴニョゴニョと2人が何やら耳打ちする。
何の情報交換が行われているかここからではわからんが2人は真剣のようだ。

それで何らかの情報が暁に送信されたのだろうな。耳打ちが終わり、暁は、自信に満ちた表情をしていた。

「本当だな。これで行けばミナちゃんは俺に振り向いて仲良くできるんだな??」

「無論だ」

じっと見つめあうかえでと暁。

「じゃ、行ってくる。今日の昼のために赤飯を用意して待っていてくれ」

ミナの元へ向かう新生暁。…ってお前をそこまでさせるモノは一体何なんだ。
そして、堂々たる自信満々な笑みに満ちた戦士は、まるで勝利を予感させるかのような背を向け、それは俺たちにも勝利の念が伝わってくるようだった。

んで、ミナのところへたどり着いた暁は、ミナに話しかけていた。

「ミナちゃん、ちょっといいか」

暁が先に仕掛ける。

「…え、あの。…た、確か、…と、東條さん…ですよね」

続いて、おどおどしながらミナが迎え撃つ。
さて、どんな戦法に出るんだ??ミナは手強いぞ。攻略できるもんならやってみやがれ。
そう思い、俺はここで高みの見物と称して見守ることにした。

最初は、ミナはおどおどとしながら、そして、暁は普段決して見せることのないくらいの爽やか笑顔で対応していた。だが、ここで事件は起こった。いや、起こした。言うまでもなくこの馬鹿が。

そして、時は動き出す。

「ミナちゃん。今から俺とラヴについて語り合おうじゃないか。ここでは人目がつく、もう少し静かなところでこの俺と暑くラヴラヴ、愛を深めようぜ?」

「…え、あ、…あの、あのあの…。ぅうぅ…きゃうっ!?」

暁が何か呟いた瞬間、ミナはびくんと飛び上がるようなくらいの反応を見せたかと思ったらガタっと席を立ち上がって、俺を見つけるとびゅーんっと一直線に向かってくる。

っと思うのもつかの間、ミナは顔を真っ赤にし俺の腰に纏わりついていた。
って何てこと言い出すんだこの馬鹿。
俺は、ミナを冬姫に預け、あの馬鹿の元へ近づいていく。

俺に気付いた馬鹿は、

「ど、どういうことだ…。せっかくかえでによる秘伝のトーク術を教えてもらったのにどういうわけかミナちゃん逃げちまった。なぜだぁぁあああ~ッ!!」

「ったりめぇだ!!そんなこと言われれば誰でも逃げるわボケぇッ!!」


-ズガッ!!!


「げふッ?!」

脳天にそのままかかと落としをヒットさせてやった。

「っていうかさっきの会話でもなかったわ。初対面の人間に対していきなり初めて会話する内容じゃねぇし、どうしてこの馬鹿は違和感も疑問も抱かないまま自慢げに実行したのかも俺には理解できん。ただの変態だぜ、あんなの」

そこで白目向いて転がってる暁を指差す。

「これで、暁のミナちゃんのイメージが『変態』ってことになるな」

「ちゃらら~ちゃらーん☆東條暁は、変態の称号を獲得したのであった」

ここでどこからかアイテムゲットしたときの効果音がなったような気がした。

「うわぁぁああッ!!いやだぁぁぁあああ~ッ!!そんな称号ぉぉおお~ッ!!」

暁は、倒れたまま頭を抱えて悶絶していた。

「自業自得だ。馬鹿。…それと」

にんまり笑顔で他人事のようにしていたかえでの首根っこを掴む。

「な、何をする、この馬鹿春斗!!離せ~」

猫のように掴まれてバタバタと暴れるかえで。

「お前も同罪だ。っていうか何でそんな変なことをあの馬鹿に吹き込んだ??」

ふっと考えるような素振りを一瞬見せて、にんまり笑顔になる。

「ん~。だって面白そうだったから☆」

にんまりキラキラ笑顔のかえで。
対する俺は無言で眉毛逆ハの字。
そして、審判を下してやる。

「はい、極刑行き」

「何だよ、それ~。横暴だよ!!馬鹿春斗」

「いや、それ相応の審判を下したまでだ」

「いやいや☆だってさ、仲良くなるにはやっぱフラグを立てなきゃネ☆じゃないとイベントだってキャラルートだって発生しないじゃん。これ常識だよ☆こっちの世界での偉い人だってそう言ってくらいだしさ☆」

「いや、それこそテメェだけの世界だろ。何が常識だ。そんな常識はこの世の中では存在もしてないぞ。…っていうかそんなこと堂々と言う偉いヤツって何者だよ」

「まぁま☆落ち着こうよ、春斗。会話ってのは何気ないことでもいいんだよ。そのきっかけだってホント些細なことでもきっかけになるんだから☆要は話しかけることが重要なんだよ☆」

そう言って胸をぽんと叩くかえで。
まぁ、最もらしいこと言っているのもわかるんだが、こいつに言われると何か無性に負けた気がしてくるのは気のせいか。

「まぁ、弁解は後で聞いてやる。はい罰として、今日1日大人しくしてること。俺が認めるまでしゃべるの禁止。いいな??」

「え~でも~」

「いいな!?」

凄みを利かせてかえでに迫る。

「…アイアイサー」

しゅんと肩を落として、席につくかえで。
まぁ、今回のは悪ふざけしすぎたからな。
これでちょっとは懲りただろう。反省の色が見えたら解除してやるとしよう。
そう思いながらミナのところに向かう。

「ミナ大丈夫か??」

「え?…あ、大丈夫です、ヒナちゃん」

ぽわーんと頬を朱色に染めたミナは答える。

「ごめんな。かえでとあの変態野郎が妙なことしてさ。あいつらド阿呆だが悪気はないんだ。ただちょっとおふざけが過ぎただけだから許してやってくれ」

「あ、いいえ。…こちらこそごめんなさい。いきなりだったのでちょっと動揺してしまっただけで別に東條さんのせいとかじゃないと思います」

おろおろしながらそう答えていたミナ。…ホントいい子だ、ミナ。
心底かえでに見習わしたいぜ。
すると、くすっとミナが微笑む。