小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

第1章  7話  『魔獣者』

INDEX|2ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 

お、わかってるじゃないか茜。その調子でこの馬鹿を諦めさせてくれ。
そして、そんな茜から飛び出した言葉とは、

「犯罪チックだからだ。だって考えてもみろ。あんな小学生みたいな純粋なハートになりと無垢童顔で、さらに、こんな危ないヤツを足し算してもみろ。どう考えたってマイナス分子しか生まれないだろ。そんなヤツにあの娘は渡せん」

まるで娘がその彼氏を家に連れてきて父親に紹介して、思わず言ってしまう常套句をこの教室で実演してるようだ。

「異議アリ!!確かに俺は危険分子に見えるかもしれん!!だがそれは本当に俺だけの責任なのか?!それだけの意見を突きつけるだけの証拠と責任を持てるのか??断じて、否だッ!!」

負けずと彼氏役暁も異議申し立て反論を試みる。…何だか展開がおかしくなってないか。
その瞬間、ニヤリと茜の目が怪しく光る。

「それはつまり勝負しようってことだな??」

って、どういう発想の転換だよ、それは。

「そういうことになるな。お前とは戦いたくはなかったが仕方あるまい」

すぅっと目を閉じ、深呼吸をし、呼吸を整え、まるで精神統一するかのような面持ちの暁。
…どうやらマジのようだ。

「そうだな。これも運命かもしれんな。あたしも運命には逆らえない。というか、楽しければそれでいいや☆運命でも何でもいらっしゃいませだぜ。こいッ!!暁」

まるでこれから拳と拳の熱い殴り合いを見せるかのようなノリで向かい合う2人。
といっても本当にボカスカ殴り合いをやるんじゃないぞ。
これはまぁ、俺たちだけ限定恒例のアルティメットバトルとでも言っておこう。

つまり、ノリとノリのバトル。どちらが相手をどれだけ乗せられるかのバトル。
このバトルはポイント制で、ポイントは審判独自の判断に委ねることになっている。
もちろんそのノリ対してツッコミを入れると更にポイントが加算されるシステムだ。
こうやって両者ポイントを巡って競い合いバトルをする。これが俺たちの戦いだ!!
バトルだ!!そういうことで説明以上。

「んじゃ、俺審判ね」

「おう、頼んだぜ春斗。じゃ、始めようか!!」

ゴングの鐘が鳴り、アルティメットバトルが幕を開ける。
そして、暁がいち早く先制攻撃を仕掛ける。

「そうだ。これは俺だけの責任ではない。俺はそれを迷うなく断言できるだけの自信も確信も抱いている。なぜならば、その原因はお前たちにあるのだからな」

それを聞いた茜は、ニィっと妖しく微笑む。

「ほう??それは初耳だな。じゃそれをここではっきりさせてもらう必要があるな。ほれ、遠慮なく言ってみろ」

父親兼裁判官役の茜もそれに続く。

「集団心理って言葉知ってるか??」

「ってわかるかっ!!そんなもん。いきなりムズイこと言うんじゃねぇ!!あたしには『何だソレ??』的に知らん言葉だ」

試合開始早々にその発言に茜の右ストレート強が暁を襲う。
ちょ……おい。いきなりルール無視っすか、茜さん。
…それとも今のは、茜なりのツッコミだったのか?

「ならば教えよう。集団心理、それは自分の意思や思惑がない状況であっても、自らの記憶自体が多数派に同調して書き換わり、そんでもって多数派の主張する嘘の事実でも本気で信じちまう現象が起こるってヤツのことだ」

「へぇ。ってかお前意外に物知りだな」

それは俺も同意。成績は俺と大して変わらんというのに知識の幅だけはピカイチだな。
一体どこからそんなもん調べてくるんだろうな。
俺が唸ってる間にも、茜は反撃の態勢に入り始めたようだ。

「でも、それがどうしたっていうんだ??」

「フフ……気付かんか??この言葉の意味する本当の事実ってヤツを」

「気付くかっ!!わけがわからんわ」

ぐーパンチで暁の顔にツッコミ(茜専用)を入れる。

「俺にもさっぱりだ。もったいぶらずに早く言えよ」

「…そ、そうだな。こうしてる時間も惜しいしな。では、言わせてもらおう、真実ってヤツを!!それはな…」

大きくそこで溜めを入れて、それから俺と茜をビシッと交互に指差す。

「お前ら本当か嘘かもわからんデマを流し、この俺にレッテルを張り、いつの間にか俺を危険分子という存在に作り上げてしまったからだよッ!!」

その言葉で俺と茜は互いに見合い『………』ってなる。

「どうだ。これを聞いて後悔の念を大いに抱いただろう??心の底からすまない気持ちが湧き上がってくるだろう??…って何だ2人ともその可哀相なヤツを見るような目はよ」

すると、茜が小声で俺にだけ聞こえるように耳元で囁く。

「…春斗。お前ももう気付いてるかと思うが、この勝負あたしだけではメチャクチャヘビーだ。荷が重過ぎる。ってことで春斗、お前に加勢を要請する」

って仲間に引き込まれた?!
まぁいいけどさ。どうせ見ているだけじゃ暇だったし。

「…しょうがねぇな。ここは俺に任せろ」

そう応えると、俺は暁に向き直る。

「…いや、哀れだなっと思ってな。もしそれをマジで言ってるならな」

そして、茜もそれに続く。

「まぁ…何だ。お前とは長い付き合いだ。長い付き合い故にあたしはそれなりにお前のことを知ってるし、理解もしている。…だが、さすがのあたしもそこまで本気で力説するお前を見ていたら残念ながらそれは浅はかだったと気付いてしまったんだ」

茜は悲しみに暮れるヒロインのように泣き崩れる。そして、それをすかさず俺は支え、茜の肩を抱く。今にも上からスポットライトが俺たちを照らしそうな勢いだ。

そして、俺たちは互いに悲しみを分かち合うかのようにがしっと抱き合う。

「…な、何だよ」

突然のことに動揺が隠せないようで、表情に余裕がなくなってきてるようだ。

「いや、わからないならいいさ。私はもうこれ以上お前のトドメをさすような無粋なマネはしたくはない。いつかきっと気付くときがくる。それまで、強く生きるんだよ。グスン」

よよよと涙を見せるような仕草をする茜さん。
そして、俺は、茜の肩を抱き、

「暁よ。今日より明日。そして、明日よりも今日だ。これからあらゆる困難が待ち受け、それはお前の心を蝕んでいくだろう。だが、我ら味方だ。どんなことがあろうがお前を支えやる。この逆境を跳ね返してやろうじゃないか。さぁ、行こうッ!!我らと共に頑張って人生を歩んでいこうではないか」

俺と茜は暁の背中を優しく叩いてやる。それはまるで悩める少年を暖かく、そして優しく包み込むようにぽんっと背中を押しているかのようだった。きっとバックにはキラキラと光り輝き、俺たちの明日への道筋を描いていることだろう。

「何なんだよぉぉおお~ッ!!頼むから俺を無視して勝手に話を進めないでくれぇぇええ~ッ!!おぉ、何だこのやり場のない孤独感は。なんて寂しいんだ。このビックウェーブなノリ乗れない挙句、俺に哀れみを与えるとは何かものすっごく孤独な気分になってくる。負けだ、この俺の完全感服お手上げだ。うがぁ~もうなんか惨めじゃ~」

その場にバタンと倒れる勢いで暁は泣きながら崩れ去っていく。

「あはは。やったぜ、春斗。あたしらの完全勝利だ」

満面の笑みでガッツポーズを見せる。
果たして俺たちは何と戦っていたのか、何に勝利したのだろうか。