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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  7話  『魔獣者』

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「…止まれ」

「その声は………ですの?やはり…あなたなんですの…」

「やはり…とはまるでこの展開が予めわかっていたような口ぶりだな」

「はい。これが私に与えられた能力なので。あなたがやって来ることはわかっていましたの」

「ほ~う。わかっているのなら、なぜ大人しく学園に留まっていないのだ?それに、使い魔が勝手にこの里から抜け出すことは禁じられているはずだぞ。それなのになぜだ?」

「ご主人様に危険が迫っているのですの。だから、ご主人様の使い魔であるこの私がお側にいなくてはいけないのですの。私はご主人様の元へ行かなければいけないのですの!」

「ふーん。そうか…それは大変だな」

「だから、お願いですの!!そこを通してくださいですの!!」

「ふっふっふ…。それは無理な相談だな。この俺がはいそうですかと通すわけがなかろう。わかったらさっさと学園に戻るんだな」

「そうですの…。では、不本意ですが、あなたを倒してそこを通らせてもらいまですの!」

「へっ!俺を倒してここを通るだと…?はーっはっは!お前が俺を倒す?俺を笑い死にさせる気かーはっはっは!やれるもんならやってみろ!!」

「やってみせますですの!私はご主人様の元へ行かなければいけないのですの!!いざっ!!覚悟ですのっ!!」

「へっ!馬鹿がッ!!ここは通さんッ!!くらえッ!!」

両者の大きな力と力がぶつかり、光に包まれる。
そして、光に引きずり込まれるように俺の意識は現実に戻っていくのだった。



-ピピピピピッ


「う…う…ん…」


-カチ


「ふぁ~ぁ。もう朝かよ…眠ぃ~」

俺は目覚まし時計を止めるとの同時に大きな欠伸をする。

「そういえば、さっきまで何だか変な夢を見ていたような気がする」

何だかすごく緊迫とした感じの変な夢だったな。一体あれは何の夢だったんだ…。
ホントわけわかんねぇ夢だったぜ…。

「まぁいいか。どうせ夢なんだしな。どうでもいいか~。うーん…」

俺はさっきの夢のことを振り払うかのように大きく伸びをしてみせる。

「よしッ!!んじゃ、今日もちゃんと起きれたことだし、とっとと着替えるか」

腹もいい感じで減ってることだし、明日香の朝ごはんが楽しみだ。
俺はそう思うと、ベッドから降り、学園に行く支度をするのだった。



朝のHRが終わり、ふっと俺があまりの眠気で大きな欠伸をしていると、真剣な顔で近づいてくる暁が薄目で窺えた。

「なぁ、春斗。ちょっといいか??」

「何だよ俺は眠いんだ。出来ればこのまま静かに眠らせてくれないか」

「くかー。ぐすかー」

既に俺の隣のかえではどうやら夢の中のようだった。
俺も早く夢の中に入りたいもんだぜ。

「そんなつれないこと言わねぇで相談に乗ってくれよ。後でジュース奢ってやっからさ」

その言葉に俺は鋭い目つきになり、へらへらしている暁を見上げる。

「この俺をたかがジュースなんかで買収するのかお前は。何年俺の友人やっていやがるんだ。もっとこう何かあるだろ??捻りの効かせた気を惹かせる文句がよ。お前ならやればできるはずだ。今のこの俺を惹きつける最大の言葉を!!」

俺はキランと目を光らせる。

「任せておけいッ!!それくらい俺にとっちゃ朝飯前。美少女口説かざるモノ萌えるべからずの信念に誓って見事にお前の心を鷲掴みにしてやるぜ」

ぐっと力強く親指を突き立てる。

「それでこそ暁だ。ダテに学園の女子に距離を置かれてるだけあるな。期待してるぞ」

「一言余計じゃゴルァッ!!…くそ、こうなったら汚名返上、起死回生でオトメの心をくすぐるスイートで胸トキメクようなこと言って、『暁君ってホントはイケてる男の子じゃない??』ってギャフンと言わせてるぜ」

いや、言わせなくていいから。それにそもそも俺はオトメじゃないし、口説きとかいらんし、てか勘違いされるわ、そんなもん。俺はやれやれと肩をすくませると、その重たい身体を起き上がらせる。

「まぁいい。で、何だ。その相談ごとってのは??」

「え、何ださっきのはいいのか??なしで聞いてくれるのか??」

「まぁな。今日は特別サービスだ。ジュース1本で聞いてやるよ」

「へ??そんなのでいいのか??それぐらいでいいならお安い御用だ。しっかし気前いいじゃねぇか。特別サービスか。今日はそのサービスに感謝しなきゃな」

さっき自分で奢ると言っていたことも忘れ、感謝しだす暁。…こいつには国を挙げて馬鹿の称号でも与えるべきじゃないか。

「よっす。何やってんだよ2人して」

どさっと俺の机に堂々と座る茜。俺の目の前でスカートがめくれて、パンツが見えてるのも気にせずに話に加わろうとしていた。…もはや、何も言うまい。

「相談があるんだとよ。この馬鹿が」

「相談??相談っていうとアレか。自分だけではどうしようもないときに『ねぇちょっと、相談があるんだけど』って言うあの相談のことか??」

「そうらしいぜ」

それを聞くと、茜は、暁のつま先から頭までゆっくりと見上げて、そして、最後に身体全体を見る。

「生きていてすいません??それとも存在に対する相談とか??」

「そうそう。そうなんだよ。最近どうも俺の存在がうっとおしいみたいでクラスの女子も話しかけても『暁君ってホント人生楽しんでるよね』って呆れた顔で軽くあしらわれる今日この頃で困ってんだ…って違うわぁッ!!さらっと俺の心の傷を抉るんじゃねぇよ」

「いや、さっきもちょうどそこで現場を押さえたもんだからさ、あたしは思ったわけよ。『これは使えんじゃないか』と。これはネタがないあたしのためにエンタの神様が授けてくれたものだと。だからあたしは今こうやってそれを実行したわけなのだよ、アンダーソン君」

「んなワケあるかッ!!ってかお前は何者だよ、ワトソン君」

そう言いつつもちゃっかり楽しそうに茜のノリに乗る暁。

「…ったく毎度ながら茜には女心ってもんがねぇ。いいか、例えば、俺が女の子のような繊細なピュアなハートの持ち主だとしよう。その俺のシャボン玉のような純情な心に傷をつけて、面白いのか満足か滑稽なのかよ??」

「うん。あたし満足だ」

悩むことなくにかっと笑って即答で答えた。

「まぁ、見ていて面白いな」

「…お前らは鬼だ。鬼神の神だ」

っていうかこいつムダに今神2回言ったぞ。

「まぁそれはいいとして。んで何だよ、相談って」

俺は話の趣旨を戻す。

「お~そうだったそうだった。つい話に夢中になって思わず一緒に楽しんでしまったぜ」

…楽しかったんだ。

「実はな。ミナちゃんと仲良くなるためにはどうしたらいいかと思ってな」

「ミナと??それはまた俺を悩ます難題の種を増やす相談をしやがる」

こんなこと聞いたらおちおち惰眠も貪れねぇじゃないか。

「ミナちゃんは可愛いからな。ホントちっちゃくて、ちょこちょこしてあたしと同年とは思えないくらいの可愛い女の子だもんな。気持ちはわかる」

「わかっちゃうんだ」

「だが、悪いことは言わんお前はやめておけ」

「な、何故ッ?!」

共感したはずの茜から思わぬ言葉に反論する暁。