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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  6話   『フォーリア国とシェルリア国との紛争』

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「だが、7人の戦士は、『大魔法戦争』終結後からしばらくしたある日を境に姿を消した。それはもう国中大騒ぎだった」

「……??それで、何で消えちまったんだ??」

「さぁな…」

さぁな…って。
ここまで話しておいて、そりゃないぜ??
そんな俺の心情を尻目に、話を再開させるヒカリさん。

「だが、その7人が姿を消したことで、新たにアセリアを統括する者を選ぶことになり、かつて、7人と両国に信頼が厚かった者にアセリアを託されたのだが、ヤツはとんだ食わせ者でな、ヤツの裏の顔……その真の目的に誰もが気付けなかったのだ」

「一応聞いてやる。そいつの真の目的って何だったんだ??」

「まぁ急かすな。…それはな、シェルリアという国そのものを滅ぼし、脅威である私たちシェルリアの魔法使いの一掃………つまり、抹殺だ」

「抹殺……だ……って、マジかよ。また物騒な話が飛び込んできたものだな、おい」

「ヤツらの真意を表には覚らせず、内密に事を進められた。両国の上層部が気付いた時にはもう遅かった。シェルリアの半分はヤツらの手にかけられ殺されてしまった。ヤツらはフォーリア出身で、敵である私たちシェルリアと友好条約を結んだことが気に食わなかったらしい。シェルリアは敵、その力を恐れ、脅威である存在を許せなかったのだ。そして、ヤツらは平和と称して、たくさんのシェルリアの民を殺した。偽りの平和を謳って罪もないシェルリアの民を殺したのだ。実に許し難いことだ……許せるものではない。私たちはヤツらを憎んだ。仲間を殺したヤツらを許せなかった。戦争を終結させ、友好条約を結んでおきながら何故このようなことが起きているのか……私たちシェルリアの民は裏切られた思いだった。それから各地で反発、反乱を起こり、再び混沌した日々の到来だ。皮肉なものだな……大魔法戦争終結の後も、未だにこのような輩が私たちシェルリアの民を狙われるとはな。これじゃ友好条約も守護するアセリアの存在も何もなくなってしまったも同然だ。…でもまぁ、そんなことは長くは続かず、上層部に真意がバレて、結局、ヤツらは送り込まれた者たちによって皆殺されてしまったがな、フフ。この一派が消えたことで、取り敢えず、手打ちにってことになり、アセリア関係者やフォーリアの上層部の者が謝罪し、それからは少しは落ち着きを取り戻しているようだ…フフフ」

そこで一息ついたようで、ヒカリは、ふと軽く微笑み、ゆっくりと空を見上げる。
反対に、俺はマジに最初で最後と言わんばかりに、先ほどから度を越えた物語を繰り広げるヒカリを直視した。だってよ、延々と電波なことを言っているんだぜ。おかしいって思うだろ、『普通』は。

そんな非日常的なことを急に言われたって、はい、そうですか…と受け入れられるわけねぇ……普通のヤツだったらな。でも、昨日、実際に俺は非日常的なことに遭遇しちまったわけだ。直接ではないが、妙な感じを、声を俺は聞いたような気がする。ミナによれば、俺が不可思議な力を使って、こいつもまた何だかわからん不思議パワーを俺にぶっ放したり、それを俺がゲームやアニメであるような何だかわからん【略:謎パワー】を用いてパッと手をかざせばそこからピカンっと防御フィールドを展開して、防いだりと……そりゃもう、どこからどう見てもファンタジーワールドだったようだ。

その時は、半信半疑であったが、あの物理的に破壊されたとは思えない公園を見て、結界とやらがなくなった途端にそれも元に戻っていたのを見て、あぁ、これはきっと魔法なんだな……っとまるで魔法使いみたいになった気分もそれとなく感じたさ。認めてやるよ。

だから、こいつの話にはどこか信憑性があった。
今の俺を納得させるだけの説得力がこいつの話にあるような気がした。
この話だけは俺をからかっているわけでも、嘘をついているわけでもない……と思う。

でも、俺は信じたくなかった。これは俺の我侭なのかもしれん。
ある一線を越えたくがないための最後の抵抗。
崖っぷちで追い詰められながらも必死にまだ抗おうと踏ん張っているんだ。
だって、もし、この一線を踏み越えてしまうことがあれば、もう戻れないような気がするからな……。

俺はそんなことを思いながら、ポリポリと頭を掻いた。
ふと、そこでちょいとさっきの話で気になったことを思い出したので訊いてみる。

「うーん。俺には、さっぱりわからん。っていうかフォーリアとシェルリアの魔法使いって何がどう違うんだ?力だけなのか?」

「もちろんそれもある。だが、根本的に両者の魔法使いは異なった存在なのだ」

ん??何だかだんだん頭が混乱してきたぞ。

「いいか、まず、フォーリアの魔法使いとは、魔法学校の6年間の全過程を修了し、加えて、あと4年間は最終試験を受けなければならない。その最終試験を無事クリアするために己の力を見つめ直し、己を磨くのだ。今までは集団での行動だったが、ここからは一人だ。己自身との戦いなのだ。ほとんどの人間は旅へ出た。フフ……まぁ中には初心に帰って、一から復習している者もいたようだけどな。そして、4年を経て最終試験を見事突破すれば初めて魔法使いとして認められるというわけだ。それに対してシェルリアの魔法使いとは、正確には魔法使いなどではない」

それを聞いた俺は、混乱したまま言う。

「ん?それはどういうことだ?」

意味がワカラン。

「シェルリアの力は、太古より祖先から代々受け継がれる力……。魔法といより魔術に近い。それを先代よりずっと伝えられてきたのだ。これまで生死をずっと繰り返し、その先人たちの命の循環を経て今日まで受け継がれてきたのだ。…そう、その誇り高きシェルリアの血が流れる者に宿る特別な力なのだ。私たちは自らの意思でなろうとなったわけではない。この世に生を享けたその時にはもうこの力を宿す運命にあったのだ。フフフ……まぁ良く言えば、秘めたる力。悪く言えば、輪廻の呪いというところか」

いやいやいや、そんなドヤ顔で言われても全然わからんから。これっぽっちもよ。
正直なトコ、さらにわけがワカラン。

「でも、まぁ例外なヤツもいるけどな。ワタシのように…」

弱々しい笑みを浮かべ、消え入るような力ない声でそう言った。
そこにはさっきまでの冷徹でトゲトゲしい鋭い瞳はなく、小生意気に高笑いする姿もない。
ただそこには、一人の少女がいた。
容姿相応のか弱い女の子がそこにいるように見えた。

「私は元は何の力も持たない普通の人間だった」

「お前が……俺同じ普通の人間??……にわかに信じがたい話だなそれは」

「フフフ、私だってそうさ。……信じたくない。私は生まれた時から普通の人間だった……そう思いたい。シェルリアの一民でありたかったのだ。だが、ソレは叶わない。私が慕う者にそう聞かされ、私がシェルリアの者でないことが証明された。遺伝子検査すればすぐにわかるからな」