第1章 5話 『少女との再会』
「ていうか待てぇい!!負けてないわッ!!私がいつ貴様に負けたっていうんだよ!!あれは私が貴様を見逃してやったのだ!!私が本気で戦っていたら貴様になんぞ軽く捻り潰してやったさ!!今、貴様がここにいられるのも私があの時見逃してやったからこそなんだぞ!!だから、私が本気の力を出さなかったことに貴様は泣いて感謝すべきなんだ!そこを誤解するなよ!」
ヒカリは激昂して、俺を憎々しげに睨みつけてきた。
俺の発言に『聞き捨てならん!』と言わんばかりに、あからさまに怒りを露にする。
ヒカリの顔は険しく、一気に真っ赤になって、今にも沸騰したやかんみたいに湯気を放出しそうな勢いだった。
「そんな怒らんでも…、…っていうか、ちょっとからかってみただけなんだが」
「………な!」
ハッ!とし、唖然とするヒカリを尻目に、俺は笑いが堪えられず噴出した。
「ハハハ。そんなにムキになりやがってよ。からかっただけなのに…ハハハ」
俺はわしわしとヒカリの頭を撫でてやる。
「こら、貴様!気安く私の頭を触るなッ!おいッ!聞いてるのかッ!!こら、止めろッ!」
頭を撫でられたのが気に障ったのかヒカリは、バタバタと暴れ不機嫌オーラも上昇中なご様子であった。
「ハハハ。まぁそれはいいと、んでどうしてここにいるんだ?」
「フン…。やりにくいヤツだな…」
むすっとした表情でそう小さく呟いた。
そして、ヒカリはゆっくりと口を開く。
「…実は、貴様に話がある」
「俺に?…何の?」
「…そうだな。フ…ここでは人の目につく。誰もいない静かな場所に移動するぞ」
「ん?そうか?わかった」
一体何の話だ??
しかも、誰もいない場所ときた。…これは絶対ヤヴァイ話だろうな。
それにこういう流れはよくあるデフォだし。
などと俺が思いを巡らせていたら、ふと、ヒカリを見るとさっきからずっと俺を見つめたまま立ち尽くしていた。…何だ??
「…な、なぁ、移動するんじゃないのか?」
気になったので俺はヒカリに訊ねてみる。
「そうだ。だから、早く案内しろ」
「って俺待ちだったのかよッ!!そういうのははよ言えッ!!」
などとツッこんでる場合じゃないな。確かに、早く移動しないと俺がここにいることも誰かに見つかって問題になっちまう。…しかも初等部でっていうのはマズイ。バレたら翌日から妙な噂が学園中を駆け巡り、俺は晴れてロリコンの称号を得ることになるだろう。…それだけはごめんだ。
しかし、誰もいなくて静かな場所か…うーん。
…となるとあそこしかないな。
そう思うと、俺たちは急いでここから退散し、目的地の場所まで移動するのだった。
<次回へ続く>膼볯膼臨鎁臣
作品名:第1章 5話 『少女との再会』 作家名:秋月かのん