シリアル
それは 清々しい朝のことだった。
僕は、いつもどおりに目覚め、食卓に彩りよく並べられた朝食と向き合った。
「今朝は 洋風だね」
程よい焦げ目のトーストが二枚。表面にはバターとオレンジマーマレードが塗ってある。
彼女、あぁ僕の妻ですが、どうも人前で『妻』というのが照れくさくて言えないので、『彼女』と言わせてください。
その彼女が、アウトレットで購入した白磁器のスクエアプレートに 半熟の黄身の目玉焼きが一個と赤身と脂身が層をなしているベーコンが二枚。柔らかそうなサニーレタスが添えられ、ベランダで栽培している少し皮の堅いプチトマトが二個と 斜に薄切りしたのキュウリが二ミリほどずらして五枚重なって脇を固めている。そして 僕の好物のまぐろの油漬けのツナがトッピングしてある。ドレッシングは 先日彼女が学生時代からの友人に戴いたゴマ風味のものだ。飲み物は 最近気に入っているアールグレーのミルクティ。砂糖は入れていない。金魚鉢の縁取りのような硝子の小鉢には 白いブルガリアヨーグルトにブルーベリーソースがかけられている。
ヨーグルトを食べる為にスプーンはあるけれど、やはり箸のほうが扱いやすく フォークはやめてもらった。
「いただきます」
僕は、両掌をなんの躊躇もなく合わせ、軽く頭を下げた。
僕は、箸よりも先にドレッシング瓶に手を伸ばし、シャカシャカと振り、蓋を開けた。瓶の口からたらぁりと零れる液をサラダにかけるのだが この綺麗な盛り付けを邪魔しないようにかけたい。最後のひと筆を描く画家になった気分だ。
この場合、ドレッシングをかけてから「いただきます」をするものか 今したとおりでいいものか考えるが、ドレッシングの流れを見ているうちに どうでも良くなってくる。
うまくいったな、とほくそ笑んでドレッシング瓶をテーブルの端に置いた。
半年ほど前に出張した金沢で見つけた漆の夫婦箸と箸置き。漆の匂いも気にならなくなり、持つ感触も手に馴染んできたその箸で 朝食を戴く。
僕は、いつもどおりに目覚め、食卓に彩りよく並べられた朝食と向き合った。
「今朝は 洋風だね」
程よい焦げ目のトーストが二枚。表面にはバターとオレンジマーマレードが塗ってある。
彼女、あぁ僕の妻ですが、どうも人前で『妻』というのが照れくさくて言えないので、『彼女』と言わせてください。
その彼女が、アウトレットで購入した白磁器のスクエアプレートに 半熟の黄身の目玉焼きが一個と赤身と脂身が層をなしているベーコンが二枚。柔らかそうなサニーレタスが添えられ、ベランダで栽培している少し皮の堅いプチトマトが二個と 斜に薄切りしたのキュウリが二ミリほどずらして五枚重なって脇を固めている。そして 僕の好物のまぐろの油漬けのツナがトッピングしてある。ドレッシングは 先日彼女が学生時代からの友人に戴いたゴマ風味のものだ。飲み物は 最近気に入っているアールグレーのミルクティ。砂糖は入れていない。金魚鉢の縁取りのような硝子の小鉢には 白いブルガリアヨーグルトにブルーベリーソースがかけられている。
ヨーグルトを食べる為にスプーンはあるけれど、やはり箸のほうが扱いやすく フォークはやめてもらった。
「いただきます」
僕は、両掌をなんの躊躇もなく合わせ、軽く頭を下げた。
僕は、箸よりも先にドレッシング瓶に手を伸ばし、シャカシャカと振り、蓋を開けた。瓶の口からたらぁりと零れる液をサラダにかけるのだが この綺麗な盛り付けを邪魔しないようにかけたい。最後のひと筆を描く画家になった気分だ。
この場合、ドレッシングをかけてから「いただきます」をするものか 今したとおりでいいものか考えるが、ドレッシングの流れを見ているうちに どうでも良くなってくる。
うまくいったな、とほくそ笑んでドレッシング瓶をテーブルの端に置いた。
半年ほど前に出張した金沢で見つけた漆の夫婦箸と箸置き。漆の匂いも気にならなくなり、持つ感触も手に馴染んできたその箸で 朝食を戴く。