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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 今日も兄貴は任務で来なかった。
 だけどついに対兄貴用(?)のビスケットは完成した。
 手紙と一緒にポストに入れておけば大丈夫だろう、そう思った私は荷物を持って兄貴のマンションへ向かった。
「兄貴、喜んでくれるかな…… って、何考えてんのよ私は!」
 私は首を振る。
 別にあのバカ兄貴の喜ぶ顔なんて見たく無かった。
 そりゃひざまずくとまではいかなくとも、謝るくらいはして欲しかった。
 私に協力してくれた克己先生や塩田さん達の手前、この努力は報われたかった。
 これで文句を言おう物なら本当に絶交だ。
 
 兄貴のマンションが見えて来た時だった。  
 私は足を止めてため息を零すと鞄からビスケットを取り出した。
「ううっ……」
 私の手が物凄く震えていた。兄貴のポストに入れるだけだってのに……
 そう考えている時だった。突然私の目の前のアスファルトに亀裂が入って盛り上がった。
「な、何っ?」
 私は身を竦める。
 途端アスファルトが破裂してその下から大柄な異星人が姿を現した。
 里中先生のパソコンに映っていたグラドって異星人だった。
『グゥ……畜生、腹減ってあんまり動けなかった……んっ?』
 グラドは鼻孔をヒクつかせると鋭く吊り上がった目で私を見て来た。
「ひっ?」
 私は両肩をビクつかせる。
 するとグラドの視線が私の手元に向けられると口からよだれを垂らした。
『美味そうだ…… そいつをよこせっ!』
 グラドは手を伸ばして私に襲い掛かって来た。
「きゃああっ!」
 私は身構える。
 しかしセイヴァー・ブレスが光り輝き、私の周りに青白く発光するドーム状のシールドが出来上がった。
 グラドが壁にぶつかるとまるで高圧電流でも流れた様に火花が飛んだ。
『グゲェエエェェエ―――ッ!』
 グラドは地面に倒れる。
 そう言えばこのセイヴァー・ブレスはバリア機能を兼ね備えている事を思い出した。
 これがある限り私の身の安全は保障される。
 しかしグラドは諦めずに私に襲い掛かって来た。
『グオォォオオっ! そいつを寄こせぇェエ―――ッ!』
 グラドはバリアにしがみついて爪を立てた。
 食い意地もここまで張ると恐ろしい物だ。
 だけどこれを渡す訳にはいかず、両手で持って目を閉じた。
(あ、兄貴っ……)
 私は心の底で兄貴を叫んだ。
 するとその時だった。
「この、ブタ野郎―――っ!」
 突然空から兄貴が現れるとグラドに向かって右足を突き立てた。
「グヒィ―――っ!」
 グラドは再び地面に転がる。
 さらに空から不破さんが急降下、さらに電線から三葉さんが飛びだした。 
「あれ、マイ? 何でここに?」
「あ、その……」
 私は言い出す事が出来なかった。
 まさか兄貴にビスケットを作って来たなんて口が裂けても言えなかった。
 すると三葉さんとセイヴァー・アームズを構えて言って来た。
「とにかく下がってな、危ねぇぞ」
「こいつはアタシ達が倒すから!」 
 一歩前に踏み出す。

 兄貴もセイヴァー・アームズを取り出して金色の光の刃を作りだした。
 グラドは立ち上がると歯を軋ませた。
『クソっ! 何で邪魔すんだよ! 飯を食う事がそんなに悪い事かよ?』
「黙りやがれ、人様のモンを奪ってまで食ってるテメェにそんな事を言う資格はねぇんだよ!」
 兄貴はセイヴァー・アームズを両手に構えてグラドめがけて突進した。
 間合いを詰めて金色の刃を振り下ろすが、グラドは身を翻して交わしてしまった。
「くそっ!」
 兄貴は切り返そうと身を翻すが、グラドの反撃の方が早かった。
『カアアッ!』
 グラドの大きく開いた口から緑色の粘着力のある液体を吐き出した。
 兄貴はそれを頭からかぶってしまった。
「うわっ?」
 兄貴は一瞬怯むが直ぐに目を見開いて斬りかかろうとする。
 だが突然兄貴の腕が止まった。
「ぐっ……」
 兄貴に振りかかった液体が突然白く変色し、硬質化した。
「タクミっ!」
「野郎っ!」
 不破さんと三葉さんは飛びこもうとする。
 しかし相手の動きの先を呼んでいたのだろう、グラドは兄貴に波なったのと同じ、無数の液体を解き放った。
「はああっ!」
 不破さんが前に出て両翼の風圧で吹き飛ばそうとするが、それは囮だった。
 何とグラドは兄貴を担ぎあげると不破さん達目がけて放り投げた。
「うわあああっ?」
「ちょ、タクミっ?」
「ヤベっ?」
 このイレギュラー状態に普段は頭脳派の三葉さんも動く事が出来ず、3人はその場にもつれ倒れる。
 さらにグラドは再び液体を吐き出して兄貴達の上にぶちまけた。
「ちょ、退いてよタクミ!」
「うるせぇ! 動けねぇんだよ」
「なんてこった。オレ様がブタ野郎にしてやられるとは!」
 3者3様の言葉が響く。
 寝転がった状態で固められたんじゃ不破さんも十分に力が発揮できないんだろう。
 三葉さんも悔しがりながら滅多に見せない表情を見せる。
『さてと、これで落ち着いて食事が食えるぜ』
 グラドは私に向かって視線を向ける。
「やべっ、逃げろ!」
「う、うん!」
 私は兄貴に言われて逃げ出そうとする。
 しかしグラドは鼻で笑いながら大きく口を開けて息を吸いだした。
「きゃああっ?」
 私は悲鳴を上げる。
 息を吸うなんてレベルじゃ無い。
 結構離れていると言うのにすさまじい吸引力だった。足の力を少しでも抜けば吸い込まれそうだった。
 何とかして近くの電線にしがつくが、とうとうビスケットは私の手から離れてしまった。
「しまった」
 私は手を伸ばすが遅かった。
 ビスケットはそのままグラドの口の中に入り込んだ。
『んぐんぐ……』
 ビスケットを頬張るグラム、だが突然顔を顰めた。
『ブべっ、何だこりゃ……』
 私のビスケットを地面に吐き出した。
 さらにその上から巨大な足で踏みにじった。
『どこで売ってたんだこんなモン、人間のくうモンじゃないぜ』
 忌々しそうに言いたい放題言うが、私の耳には何も聞こえず、頭の中が真っ白になった。