SAⅤIOR・AGENTⅡ
その頃。
オメガの円盤の中ではゲベールの戦いをモニターで観戦している者がいた。
足や軸の無い宙に浮かぶ腰をかけたその男はつまらなさそうに吐き捨てた。
『フン、使えん奴だ』
宙に浮かぶモニターを、足も軸も無い宙に浮かぶ座った男は両足を床に着けて立ち上がった。
すると部屋の扉が開くとエンフィールドに釣られたアブラムが入ってきた。
エンフィールドは両足を揃えると男に敬礼した。
『失礼します、ご命令道理客人をお連れしました。モリゾン提督!』
エンフィールドに言われてモリゾンは振り向いた。
灰色の皮膚に長方形の頭部、巨大な白い目と避けた口から覗く並んだ牙、黒い生地で膝丈まである上着の腰にはオメガの紋章が掘られたバックル付きのベルトが巻かれ、右肩から左腰にかけてかかっている外側だけが白い赤いサッシュ、右胸には無数の勲章、両肩には金色のエボットの軍服を着ていて、下には白いズボンと黒い皮のブーツを履いた彼は呆れて溜息を零した。
『エンフィールド少佐、今ゲベール少佐が倒された』
『ハッ! それにつきましては何と良いますか……』
エンフィールドは顔を顰めて頭を深々と下げた。
別に責められている訳ではない、ロボット兵は倒されただろうし、ゲベールの敗北は自業自得…… しかし相方を止める事が出来なかった自分にも非はあった。
するとアブラムは胸ポケットのペンを取り出した。
「どうやら甘く見ましたね」
アブラムはペンのボタンを押すと内部のコンピューターに収納されているデータが目の前に映し出された。
小さなテレビ画面のような物が浮かび上がると匠とレンの顔とデータが映し出された。
「ミツルギ・タクミは候補生時代から好成績を残し、尚且つ数多くの異星人犯罪者の検挙をしてきました。さらにそちらのレンも甘さゆえに本来の実力が出せずにいたらしいですが、実際は幹部クラスの実力を持っていた聞きます」
アブラムはデータを読み上げた。
それをモリゾンは目を細め、エンフィールドは眉間に皺を寄せて耳に通した。
話し終えたアブラムはデータを消すと左手の人差し指と中指で丸いメガネをクイッと上げながら言って来た。
「情報は最大の武器ですよ、オメガの情報収集能力は少し改ざんの余地がありますね」
『何だと? 貴様! 我々を愚弄する気かっ!?』
『よせ、エンフィールド少佐、全て事実だ』
さすが責任者と言うべきか、快くは思わないが苛立ちを見せる様子も無く吐き捨てた。
そして次に宙に浮かぶモニターに振り向くと、そこに映る敵と裏切り者の2人を見た。
しかしなにやら2人は揉めている様子だった。
しかし何を言っているのか分からなかったので、モリゾンは顔を顰めると少し離れた所で船体の要とも言えるコンピューターを操っている異星人に命じた。
『おい、もっとボリュームを上げろ』
『ハッ!』
緑の皮膚に尖った耳と黄土色の瞳のヘルメットをかぶったその異星人は手元の小さなレバーを上に上げた。
途端画面越しに2人の言葉が船内に響いた。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki