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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 今から5年前、元々極秘の機関だった研究機関の解散が決まった。
 さっき千鶴ちゃんが言った通り備渡…… いや、浦木は娘をモルモットに使った事で異端視されて学会から追放された。
 科学者としての地位を失った浦木は毎日酒に溺れ、自堕落な生活を送っていたのだが、そんなこいつの元へ1人の異星人が現れた。
 そいつは彼に超能力研究者としての知恵を借りたいと言って来て莫大な研究費用と独自の研究所を与えられた。
 浦木は狂ったように超能力者を作り出す研究を進め、2年がかりで研究が完成すると次の計画に取りかかった。
 それは人材の確保だ。
「考えて見て、刀だって使う人間が良無ければ何の意味も無いでしょう…… 実験に使うモルモットが必要だったの」
「それが、彼らって事ですか?」
「ハナっからモルモットの確保が目的だったって事か、しかも大量にゲットできる」
「デタラメだっ!」
 すると浦木が叫んだ。
 浦木は一歩前に出ると振り向いてエイリアン・ハンター達に言った。
「確かに超能力の研究をしていたのは事実だし、機関が解体されたのは事実だ。だが娘を被験体にしたのは同意の上だ! それに私の研究はあくまで平和目的の為、宇宙人から地球人を守る為に……」
「その宇宙人の力を利用して?」
 千鶴ちゃんは言葉を遮った。
「妹さんから聞いたわよ、貴方は彼らや恵さんにエヴォルを打ったわね、あれは銀河平和条約で禁止される薬で、一時的にナイトヘッド(使われていない90パーセントの脳)を活性化さて一時的にだけど超能力者にする事ができる…… でも使い続ければやがて脳細胞に負荷がかかり死にいたるわ」
「嘘よ! そんな事ある訳……」
「嘘じゃないわ!」
 葛西さんが叫ぶと千鶴ちゃんが制した。
 千鶴ちゃんの迫力に押されて剛田どころか周囲の者達もたじろいだ。
 さらに千鶴ちゃんは続けた。
「超能力の力の源は思念の力、でも無限に使える訳じゃない、偶然に目覚めた超能力者だって使い方を誤れば死にいたる…… エヴォルは強制的に脳を目覚めさせるからさらに負担が大きいわ、打ち続ける度に頭痛が酷くなって…… そして両手が冷たくなった時はデッドラインよ」
 その言葉に何人かが動揺した。
 どうやらその症状と同じ奴がいるらようだ。
 だがそれとは別に気になる事があった。
 それはどうして異星人犯罪者の被害者が選ばれなけれなければ無かったかだ。
 地球人だって犯罪の被害にあった人間はその犯罪者を憎んでるはずだ。
 オレがそれを尋ねて見ると千鶴ちゃんは答えた。
「簡単よ、理由は2つ…… もし地球人の犯罪の被害者に渡して復讐を煽ろう物なら必ず足が着くわ、でも異星人ならどうなると思う?」
 千鶴ちゃんは尋ねて来た。
 すると舞が答えた。
「あのネット……」
「ネット?」
「うん、彼等が異星人を殺してる動画を見たの、地球人の殺し合いなら事件になるし、新聞やニュースで騒がれる…… でも異星人なら合成としか思われ無い」
「テストには持って来いって事か…… この惑星じゃ原生住民には手を出す事は許され無い…… 抵抗くらいはするだろうが、事件自体は警察機関内のセイヴァー・エージェントに改ざんされる」
「その通りよ、そしてもう1つの理由、適合者の覚醒確率を増やす為よ」
「確率を? そんな事が出来るんですか?」
「ええ、それは強力な憎しみよ」
 千鶴ちゃんは言った。
 宇宙のあまたの惑星の中で支配種と呼ばれる原生生物に知恵と感情が芽生えるのはそう珍しい話じゃ無い、だが地球人ほど感情の揺れ動きが激しい生物は滅多にいないらしい。
 地球人は時にデータ以上の力を引き出す事はあるし、逆にデータほどの成果を見せない事もある、だがそれは数値上の話であり全てじゃ無い。
 例え自分より実力が劣る相手が強い相手を負かす事はよくある話だ。戦いには精神状態や体調が左右する事がある。
 まして人間の憎しみや怨念は強力だ。何年経とうが愛する者を失った気持ちは消えずにずっと残り続ける。
 浦木はそれを利用して異星人犯罪者の被害者の内、超能力者の素質を持つ者を選びだして異星人の仕業だと唆し、激しい憎しみを持って覚醒率を上げていたと言う。
「なるほどな、地球人相手なら諦められる可能性も高いが、異星人に殺されたとなれば完全に恨みをぶつけられるって訳か」
「そう言う事よ…… どうかしら? 浦木さん?」
 千鶴ちゃんが浦木を睨みつけた。
 するとエイリアン・ハンター達は取り乱しながら浦木に尋ねた。
「リ、リーダー、本当なんですか? オレ達を騙してたんですか?」
「リーダー、答えてください!」
「リーダーッ!」
 エイリアン・ハンター達は次々と浦木に迫る。
 すると……
「フッ、ハハハハ!」
 浦木は口を大きく開けて笑いだした。