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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 オレは本気…… つまり体の機能の半分も出せば追いつけるだろう、オレが本気出せば100メートルを1・3秒で走る事が出来る。
 だけど生憎ここは町中なもんでそんな事は出来ず、普通の高校生(と言っても名門陸上部のスタメン位)の速度で走っていた。
 奴もオレと同じ速度で走っている、だがギルに調べて貰ったら奴は地球人だ。いずれ動けなくなるはずだった。
 だが……
「……おかしい」
 オレは思った。
 奴を追い続ける内に2つの事が頭に引っ掛かった。
 奴の速度が落ちる気配が無い、フルマラソンならともかく、この速度は明らかに短距離ランナーと同じ速度だ。
 時間は数えて15分は経っていているし、走った速度も2キロは走っている、普通の人間ならスタミナが持続する訳が無い…… わき腹が痛くなってぶっ倒れてもおかしくは無かった。
 しかし幸いな事が1つあった。それは段々人通りが少なくなって来た事だった。
 これはチャンスだ。
 オレは周囲に人影がいなくなったのを確認すると足に力を入れて速度を上げると一気に間合いを詰めて手を伸ばした。
「待ちやがれ!」
 オレの手が頭を覆っていたフードをつかんだ。
「きゃっ!」
「えっ?」
 オレの手が思わず怯んだ。
 フードが落ちるとそいつは慌てて腕で顔を隠して振り向いた。
 鋭い目つきでオレを睨み付けてはいるが、黒いウェーブのかかった艶のある肩まである長い髪が風になびいた。こいつは……
「お、女?」
 オレに一瞬隙が出来てしまった。
 するとその瞬間、オレは背後に気配を感じた。
「何っ?」
 そこには目の前の女と同じパーカーを羽織った。オレと同じくらいの男が刀身の長い日本刀を引き抜いた。
 相手の刀が振り下ろされる瞬間、オレは横に跳んで回避した。
 だがオレがいた場所から2〜3メートル辺りが一直線に…… まるで豆腐の様に切り裂かれた。
 勿論女も回避していた。考えてみれば同じ服を着てるんだから仲間って事になる、つまり手口が分かって当たり前だ。
 そんな事を考えていると男は刀をアスファルトから引き抜いて切っ先をオレに向けた。
「……仲間がいたのか」
 オレは舌打ちする。
 するとそんな中、オレの足元に亀裂が走った。
「何っ?」
 途端足場が崩壊してオレは宙に投げ出された。
 弧を描きながら着地すると砕かれた場所から飛び出たある物を見てオレは目を疑った。
 それは人間の腕だった。しかも人間大1人くらいはある。
 大きく広がった掌がアスファルトに叩きつけられると腕の主が現れた。
 そいつは下はジーパンだが、顔は2人と同じパーカーを着ているので見る事ができない…… だがそいつだけは良く漫画で見かける両袖を引きちぎって肩部分がギザギザになっていた。
 3対1…… 女の方は逃げてたから戦闘力は無いって言って良いだろうが、こいつらは間違い無い、サイキックだ。
 だがサイキックの存在を知ってるオレにとっちゃ大して驚きはしない…… オレが気になる事は1つだ。
「ギル、こいつら異星人か?」
 オレが尋ねると刹那の間が空く。
『……いや、こいつ等は地球人だ』
「やっぱりな」
 オレは皮肉に笑う。
 こいつらのパーカーのマークを見てオレは思った。
 大体の予測は出来ていた。こいつらは異星人の悪事を知り、自分達で地球を守ろうって集まったんだ。
 宇宙平和条約未登録惑星では異星人の悪事の被害者や関係者はセイヴァー・エージェントから記憶を消される…… だがひょんなことから記憶が蘇る事や取り零しがままあるって聞いた事がある。
 そう言った連中は大概怯えて暮らすか、はたまた同じ憎しみを持つ者達が集まって異星人を殺して回るゲリラ組織を作るかのどちらかだ。
 前者なら時が解決してくれる可能性もあるし、ましてその地域を管轄しているセイヴァー・エージェントが何とかする。
 だが後者はタチが悪過ぎる…… 何しろ情報操作って言っても限度がある、下手すれば異星人の存在が地球に行き渡り、やがては全面戦争になりかねない。
 そんな事になったら宇宙平和同盟の中で最強の武力を誇る銀河連邦軍が動く事になる、そうなったら地球が危険惑星とみなされて攻撃を受けて壊滅だ。