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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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エピソード9,エイリアン・ハンター



 桜の花が咲き始めたがまだやはりまだ寒い3月の半ば…… その事件は起こった。
 1日が終わり、疲れ果てた人々が眠りにつく夜の世界…… と言うのは昔の話し、今や街は昼間の様に明るく輝き、エネルギッシュな若者達で溢れかえっていた。生憎の空模様と言う事を除いて……
 別に振り出したと言う訳では無い、だがただでさえ街明りの責で見えなくなった星空をどんよりと重い雲が遮り、今にも降り出しそうな天候となっていた。
 その中を1人の男が血相を変えて走っていた。
「はぁはぁはぁ……」
 年は20代前半、金に染めた頭に色白の皮膚、首にネックレスをかけた青いシャツと白いズボンの…… 明らかに今時と言った感じの男が走っていた。
 彼は道行く人達とぶつかり合うが人々は彼の事等気にもしていなかった。
 しかし彼には道行く人全てが信用できなかった。 
(奴が来る……)
 彼の頭の中はそれでいっぱいだった。
 ふと足を止めて後ろを見る、仕事帰りのサラリーマンや楽しそうに話している若者達が話をしながら歩いている中、彼の目に1つの影が浮かんだ。
「ひぃっ!」
 影はギロリと彼を睨みつけながら自分の方へ近づいていた。
 彼は身をビク突かせながら再び走り出した。

 人ゴミの中じゃ全員が敵に見える。
 疑心暗鬼に陥った彼は路地に入って突き辺りを曲がったところで腰を降ろすと大きく肩を揺すりながら息を整えた。
「ここまで来れば……」
 彼が安堵に胸を撫で下ろした時だった。
 
 カツカツカツ……
 
 路地の奥の方から足音が聞こえた。
 足音が耳に入った瞬間、彼は目を見開いて歯を鳴らして両手で両腕を震えだした。
 足音が止まり、自分が来た方向とは別方向を見ると人影が立っていた。
「うわぁぁあああっ!」
 彼は慌てて立ち上がると元来た道を逆走した。
 だが戻来た道も塞がれていた。3つの人影が彼が逃げ出そうとしている明るい世界への道を閉ざしていた。
「ひぃぃっ!」
 影が進むにつれて若者はジリジリと後退する。
 後ろにいた人影もやって来て彼を追い詰めた。
 それと同時に空から雨がポツポツ振り出した。
 街を歩いている人々の内、雨具を持っていない者達は慌てて走り出し、折り畳み傘を携帯している者達は持ち物の中から取り出した。
 だがこの路地裏の彼等はそれどころでは無かった。
「た、助けてくれ! オレが…… 何したって言うんだよぉ!」
 若者は横の壁に背を当てると自分の周囲を取り囲んだ彼等を見まわした。
 だが彼等は何も答えない。
 若者は歯を軋ませて眉間に皺を寄せると両手に変化が現れた。
 今まで色黒だった肌が緑色のヌメヌメした爬虫類のような物になると5本の指の先の爪が伸びて先端が鉤の様になった。
 若者は地球人では無く異星人だった。
『うわぁあああっ!』
 完全に冷静さを失った異星人の若者は爪を奮い立たせると目の前の物達に向かって飛びかかった。
 その時、空が眩く光ると雷鳴が轟いた。
 
 ビルとビルの隙間から彼等が出て来てその場所を後にした。
 路地の中に残されたのは壁に背を当て、その場にずり落ちてアスファルトに尻を着けた血まみれで動かなくなった異星人の死体だけだった。