ihatov88の小咄集
25ラストチャンス 6/7
サナエは部類のギャンブル好き。パチンコ、競馬、麻雀……天性のセンスと勘で今まで定職に就くことなく不自由のない暮らしを送っていて、彼女を知る者は「土壇場のファンタジスタ」と呼ぶ。どんな逆境でも最後は逆転する。まさにファンタジスタである。
今回は最近できた年下の彼氏を連れてはるばるラスベガスまで海外遠征。これまでも単身で乗り込んでは巨額の戦利金を手にして出国の際に止められたことさえある。
最初は小気味良くスロットからジャラジャラとお金を出し続けていたが、今日はツキが悪いのか次第に所持金が減って行き、スロットを諦めてルーレットのテーブルに移動した。
「お金あまり無いですが大丈夫ですか?」
心配そうに聞く彼氏。
「大丈夫よ。この一発で大逆転を決めてやるんだから……」
心配されるとプライドが傷つく。ここは姉御肌を見せてカッコいいところを見せたい。ギャンブルに明け暮れるあまりなかなかできなかった彼氏だから離れてほしくない。
絶対に決める、だってサナエは「土壇場のファンタジスタ」なのだから――。
「こんなときは自分の年齢にかけると、当たるのよ」
勝負に出たサナエは迷わず28のところに有り金を置いた。そして回るルーレットにディーラーが玉を投げ入れた。玉はルーレットの縁を勢いよく回り、やがて勢いを失うと運命のカップに近づき、そしてエッジを数回スキップさせて運命のボールが入るとディーラーはルーレットの動きを止めた。
「あ、あぁ……、当たってる!」
入った番号は33番、サナエは自分の勘の鋭さに気絶してしまった――。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔