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真朱@博士の角砂糖
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即興小説まとめ⑶

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小説の中の死刑囚
(title 小説の中の死刑囚)


僕は作家だ。書き始めて10年も経たないが、それなりに成功している方だと思う。僕は特に得意なジャンルというものを持たず、様々なジャンルの小説を書いてきた。世界観も展開も登場人物のキャラクターも、なにひとつとして似たような作品を書いたことはない。しかしひとつだけ、全ての作品に共通することがある。熱心な読者でなくても、簡単に気付くだろう。物語の最後に必ず主人公が死ぬのである。2年ほど前、雑誌のインタビューで、聞かれたことがある。何か意味や理由があるのかと。僕は答えた。「彼らは死刑囚なのです」。記者は眉をひそめた。僕はボイスレコーダーの赤いランプを見つめながら、ゆっくりとコーヒーをすすり、それから言い直した。「とくに意味も理由もありませんよ。彼らが勝手に死んでゆくのです。僕の手が勝手に彼らを殺してゆく、とも言えるかもしれません」。記者は熱心に僕の言葉を書き留めたが、それは真実ではなかった。僕の小説の主人公たちは、やはり死刑囚なのだ。死が決定している彼らは小説という檻の中でその時が来るまで滑稽に踊り続ける。踊らせるのはもちろん僕だ。僕の握る一本のペンが、彼らのステップを決める。愉快な仕事だ。しかし僕は知っている。檻の中で踊っているのもまた、僕であることを。そう、彼らは僕だ。僕らは死を待つ死刑囚だ。僕の書いた物語の結末で、僕らは死刑に処される。僕らは僕の小説から逃げることはできない。ここは檻だ。踊ろう。踊り続けよう。死刑執行のその日まで。




(終)