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真朱@博士の角砂糖
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即興小説まとめ⑶

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死にかけの曲
(title 死にかけの曲)


私の命が、尽きようとしています。
時間の流れが次第にゆるやかになってきましたので、私にはそれがよく分かるのです。
私は、名も無い曲でした。
小さな少女がその小さな手で作ってくれた、とても小さな曲。それが私です。
彼女は私をとても大切にしました。
嬉しくても悲しくても、大切な日には必ず私を奏でました。
私はモーツァルトのソナタやショパンのノクターンのようにはなれませんが、それでよいのです。
最後まで、大切な彼女の大切な曲でありたい。そう願い続けてきました。
そしてその最後が、やってきたのです。
時間の流れは、いよいよ止まりそうなほどゆっくりです。
私はひとつひとつの音を、別れを告げるように、丁寧に鳴らしました。
あと幾つの音を、鳴らすことができるでしょう。
私は彼女の穏やかな顔を見つめました。
大切な彼女はついさっき、そのしわくちゃの優しい手で弱々しく私のゼンマイを巻き、そして先に逝ってしまったのです。

ありがとう。
私はそっと、目を閉じました。