小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

花契り

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

 デジャビュ(既視感)というのであろうか、不思議な感覚に襲われた。縦縞絣といい、梅酒といい、女と出会ったときと同じでないか?
 あの時のようにグイッと梅酒を飲み干した。濃密な原酒が流れ込むと、身体の力が抜け意識を失ってしまった。
 そして、恐ろしい夢を見たのである。
 身体が重たい、息が出来ない、口の裂けた般若が馬乗りになって首を絞めている。
 「何でじゃ!何で来なんだ、待っておったぞ、ずっと待っておったぞ!一緒にあの世で暮らすのじゃ!」
 助けを求めるが声が出ない。逃げようとするが金縛りにあって動けない。息が出来ない、手足が痺れる、身体がこわばっていく、ああ、このまま死んでしまうのか!
 そのとき、犬の吠え声がした。フ~ッと重しが取れた。髪を振り乱して首を絞めしていた般若が消えたのだ。助かった!と思った瞬間、目が開いた。
 縦縞絣の女が見つめていた。彼女だ!彼女が助けてくれたのだ!
 「あ、会いたかった!ありがとう!ありがとう!」
 手を握ろうとするとスルリと身をひるがえした。哀しそうに手を振りながら遠のいていく。
 「ま、待ってくれ!」
 追いかけようとするK。手を振る女が醜い老婆に変貌していく。エエッ?!Kは腰を抜かした。その刹那、風が吹いて女の姿が消えてしまった。
 一体、何が起こったのか?
 事情が飲み込めず呆然と座り込んでいた。そこへ犬を連れた猟師が現れ、放心しているKを発見した。
 「オイ、大丈夫か?!」
 Kの肩を叩き、頬をつねった。
 「ここにおったら頭がおかしくなるぞ。このしだれ桜は魔性の桜じゃ。ダムに沈んだ村や身投げした女の怨霊が詰まっとる。・・満開の頃は危ないんじゃ、若い男が化かされよる。」
 「下にバイクがあったから、もしやと思って上がってきたんじゃ。帰れ、帰れ。化かされんうちに帰れ!」
 再び犬が吠えだした。しだれ桜が激しくざわつき、影のようなものが走って、残り桜を一斉に散らせた。
・・約束を破ったKに、女が化けて出たのだと思った。
 
作品名:花契り 作家名:カンノ