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ブラックウルフ
ブラックウルフ
novelistID. 51325
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韓国客船に乗り合わせて

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朝から雨が降り続き、昼からはいっそうひどくなり、雨音が「パラパラ」と変わった。
 病室のベッドには、治美が寝ていた。ベッドの周りに、パク?ムと治美の母親長瀬由紀子が座っていた。治美の口には人工呼吸器がはめられていた。
 人工呼吸器の定期的な機械音が空しく響いていた。
 パックーーパックーーパックーー
「治美、ああ治美・・・寒かったろうねえ、苦しかったろうね・・・」
 心電図は静かに低位置で流れていた。しかも、ときどき出来る小さな山も消えてしまい、今にも今にも直線になりそうだった。
「先生は『いつ切れてもおかしくないですから』って、医者って日本人でも韓国人でも冷たいよ、他人事なんだから」
「ホントにそうです。ごめんなさい」
「あんたが謝ることじゃないよ、でも外にマスコミの人がいたみたいだけど?」
「実は、治美が船の中にいるときに、僕に頼んだことなんです」
「えっ」
「治美のお父さんは韓国人らしいけど、ずっと会いたかったけど、会えなくて。それでも会いたいらしくて、それでマスコミを使えって」
「はー」
「だから、マスコミに『今回セオルル号で韓国人を助けた日本人女性教師がいる。その女性の父親は実は韓国人で、父親を探している。父親を探して欲しい』と訴えることにしている」
 そう言うと、パクは病室から出て行った。
 
 パクが病室前に出ると、そこには新聞記者12、3名がいて、直ぐに取り囲まれた。
「病室の女性は、日本人で沈没した船から生徒を助けたんですって?」
「はい、いまから説明します」
                             
                              THE END