堕天の勇者!? 〜魔王はじめました〜
「いませんよ。使用人はわたし一人です。なんせガルド様は使用人というものが嫌いでして、わたしもミリア様のわがままで雇われてたくらいですから」
「え!一人で大変じゃなかったのか?」
「いえ、そうでもありませんでしたよ。掃除も洗濯も料理もほとんどガルド様がおやりになっていてわたしのすることなんてミリア様の面倒を見ることぐらいでしたから」
俺の中でガルドのイメージが崩れた。なんか専業主婦みたいだな…。家事をしてるガルドを想像してみたらかなりシュールで吹き出しそうになった。
「それで魔王様わたしに話があるんじゃないんですか?」
「ああ、やりたいことがあってな。それにはメイサにミリア、そして上位魔族たちの力が必要になるんだが…」
「お茶入りましたよ〜」
「ありがとうメアちゃん」
「どうも…」
カリン、メア、エリーは女子だけのティータイムに入っていた。
「たまには女子だけで集まるのもいいものね〜」
「同感。ガンドロフがいるとむさ苦しいし、男臭いし、うるさいし、むさ苦しいしです」
「そ、そうですね〜」
メアの予想通りカリンの口からもレーヤの名前は出てこなかった。覚悟していたことだが泣きそうになってしまう。
「あ、ちょっとお手洗いに行ってくるわ」
そう言ってエリーが席を立った。
(そういえばわたしカリンさんと2人きりで話したことないな…)
残った2人の間に微妙な空気が流れる。
「ねえ、妹」
「は、はい!」
突然カリンに話しかけられて声が裏返ってしまう。いやそんなことよりも…
「え?カリンさん今わたしのこと妹っていいました?」
「うん、言った」
確かにカリンがメアの呼び方は妹だった。しかしそれはレーヤの記憶が抜けているはずのカリンが言うはずのない言葉でもあった。ただ一つ考えられる可能性は…
「カリンさんもしかしてお兄ちゃんのこと覚えてます?」
「うん」
「ほんとですか!?でもエリーさんは…」
「今から詳しいことを話す。エリーに時間魔法かけてエリーの時間経過を遅くしてるから当分来ないし」
「そ、そうですか…」
それからメアはカリンから色々なことを聞いた。もちろんレーヤのことも。
「そんな…お兄ちゃんが…」
メアはショックで倒れそうになった。それをなんとか持ちこたえる。
「それでカリンがレーヤの記憶が取られてない理由は記憶が取られる前に目が覚めてカリンの記憶をコピーしてバックアップをとっておいたから。エリーとガンドロフのは間に合わなかったけど…」
「じゃあカリンさんの魔法でエリーちゃん達の記憶を戻せば!」
「それはできない。取られた記憶は取った本人じゃないと…」
「そうですか…」
「だからまた魔王城に行くつもり」
「それならわたしも連れてってください!」
「うん、カリンはそのつもりだったから」
やっとお兄ちゃんに会える!そしてなんとしてでもお兄ちゃんを…連れて帰る!メアの頭の中はそのことでいっぱいになった。
「あれ?カリンとメアちゃんなんか話してた?」
そこに魔法が解けたであろうエリーが戻ってきた。
「エリー、おやすみ」
「え?」
カリンがそう言うとエリーが倒れた。
「カリンさんエリーちゃんに何をしたの!?」
「睡眠魔法をかけてさらに時間の流れを遅くした。これで当分起きない。早く出かける準備して」
「あ、はい、わかりました!」
そう言われメアはすぐに準備をして寝てるエリーをカリンと一緒にベッドに運んだ。
「じゃあ行くよ」
「はい!」
カリンが転移魔法を唱えると目の前が光る。そして光がおさまり目の前には魔王城が…
「あれ?ここは?」
なかった。それどころか今メア達がいる場所はまるで隕石が落ちたかのような大きなクレーターの真ん中だった。しかしカリンが魔法を失敗するだろうか?いやあり得ない。高位魔法ならともかく初歩的で単純な転移魔法を失敗するわけがない。
「カリンさんどう言うことですか?」
「魔王城が消えた…いや魔族の気配も全くしないし何より大地も抉られている。大地が!魔族が!魔王城が!レーヤが!消滅した!!」
作品名:堕天の勇者!? 〜魔王はじめました〜 作家名:ゐしドゥ