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詩に関するエッセイ

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詩の一つの可能性


 自己中心的なだけの詩には限界があります。つまり、一人称原理で成立している詩には、中心が卑近な己だけであることから生じる限界があります。詩の世界を広げるためには、他者との交渉や世の中との交渉が不可欠です。つまり、二人称原理や三人称原理を巧みに取り込むことで、多中心的で相対化された幅広い詩空間を作ることができるのです。これは詩だけの問題ではなくて、およそ人間の発達にもかかわる問題です。人間は自己中心的な時期を経て、徐々に他者との関わりに目覚めていき、また社会を自らに内面化していきます。
 ところで、詩とは人称の操作が非常に容易なジャンルであります。小説のように融通が利かないわけではなく、一人称・二人称・三人称を自在に使い分けることができます。そこで何が起きるかというと、違った人称間を自在に行き来することが可能となります。そこで、他者や社会というものを身近なものとすることや、異なった観点から見ることが可能になるのです。
 例えば、三人称である社会を二人称の位置に持ってくる。社会というものを自己に対峙する「あなた」としてとらえることで、自己と社会との関係性がより鮮明に見えてきます。例えば三人称である社会を一人称の位置に持ってくる。社会というものを世界把握の中心に据えることで、これまでよく見えなかった社会の内部構造が自己との類似性のもとで見えるようになります。他にもよくある例ですが、一人称である自己を二人称、または三人称の位置に持っていくことで、自己を客観視することができるようになります。自己を「あなた」「彼」として、距離を持ってとらえ直すのです。さらには、二人称を一人称の位置に持ってくることで、他者をよりよく理解しようとしたり、二人称を三人称の位置に持っていくことで、他者をより大きな制度的なものとして理解しようとすることもできる。「あなた」の内部に入り込むことができるし、「あなた」をより複雑で客観的な構造を持つ者として理解することができます。
 このように、詩は人称を自在に操作することによって、自己を客観視したり、他者や社会を身近なものとしてとらえることを可能にします。これは、一人称原理から二人称原理・三人称原理を摂り込んでいくという人間の発達を促進します。人間として発達するためにも、詩を書くことは有効であると考えます。






作品名:詩に関するエッセイ 作家名:Beamte