記憶宝石
【また君はそうやって僕の興味をひこうとする、何が望みだい?宝石ならあげるよ、君との出会いを宝石にすればきっと、これまで見たことない程に美しい宝石を作れるだろう】
少し…人間の形になったら意地悪になったかな…?
少しの沈黙、私にとって後悔するのには充分すぎる時が過ぎ、ようやく彼女は小さな声で話し始めた
「そんな事…言わないで…
宝石だろうと要らないよ…
私は…私はあなたと…
一緒に…
ううん、私は…」
「私はあなたと友達になりにきたの」
僕はこの少女を初めて心の底からバカだと思った
この子は見ず知らずのバケモノを救おうと、純粋に友達になろうとここへ来たのだ、報酬を要らない、とまで言ってくれて
宝石を生むことしかできなかった僕にはそんな事がたまらなく嬉しくて涙がでそうな気持ちになった
「今の記憶を宝石に変えたらきっと、とても綺麗なものになるよ」
【僕もそう思うよ、でも…この気持ちを変えてしまうのは勿体なさすぎる…】
「それが世界で一番美しい宝石だとしても?」
【それでもできないよ】
きっと、この出会いが格別素晴らしいものだったわけではないだろう
全ての出会いはきっと平等に美しく、煌めいている
その美しく紅く煌めく光は別れとなっても決して失われず、悲しみを帯びて蒼く変わっても美しく輝くのだ、私は彼女のおかげでこの答えを見つけられた
【君に会えて良かった、本当によかった
世界の美しさを知れた、、これで僕は人として生きていける
きっと何度も、何度もこの選択を後悔する、それでも構わない、もう悲しむことも怖くない
いや、怖くはあるけど…立ち向かうことが出来る
僕は君と生きていきたい】
僕はここで語るのを辞め、この路地裏から出てゆく
彼女とこの世界を人として生きていく
この言葉達を宝石に封じ込め、最後の宝石にしよう…
「お待たせ、さぁ、どこへ行こうか」