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ある引きこもりの推理

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「ああ、物証か。それなら心配ない。まだ事件現場の軒下には、他にも大きな氷柱があるはずだ。その氷柱の根本を見てごらん。恐らくまだ、電熱線の後が残っているはずだ。ひょっとしたら回収しきれていない電熱線自体が残っているかもしれない。電熱線なんて個人で用意することは殆ど無いはずだから、近所の店に聞き込みして回れば、一谷が買ったと判明するだろう。それに、その家の屋根を調べるのも良いね。私の推理通りであれば、氷柱を成長させるために、屋根の上の雪を少しずつ溶かす仕掛けが施された跡があるはずだ」
 その言葉を聞いた直後、私は画板から腰を上げた。先ほど入る時に辿った道筋をそのまま逆戻りして、脱兎のごとく部屋を飛び出す。いや、兎ではない。今の私は、見つけた獲物を追う、ハウンド・ドッグである。
「ああ、部屋のドアは閉めてくれ給え……」
 微かに聞こえた思路の声に、慌てて数歩引き返してドアを閉め、再び廊下を走り、階段を駆け下りる。
待っていろ、犯人め。今すぐ私が捕まえてくれる。
作品名:ある引きこもりの推理 作家名:tei