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水木 誠治
水木 誠治
novelistID. 51253
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輪廻

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「べ、べつに俺はおまえを騙すつもりじゃなかったんだ。な、わかるだろ。本当さ。ただ俺はおまえを……」
 下らない戯言を聞くのは、もうたくさんだ。はやくこの男を黙らせてやりたかった。私は如月に身体ごと思い切りぶつかっていった。想像していた以上に包丁の切れ味はよかったらしい。包丁は刃の部分が見えないくらいに、如月の腹に突き刺さっていた。
 如月は驚いたような顔をして、数歩後退するとしりもちをついた。私はこれで終わらせるつもりはなかった。突き刺さった包丁を抜くと、今度は如月の胸をめがけて振り下ろした。
 殺されたとき、私は何度くらい刺されたのだろう?
 刺された数の倍は、刺し返さないと気が治まらない。私は力と憎悪をいっぱいに込めて、両腕を振り下ろした。それから何度も――。



 ――一ヶ月後。
 その夜、突然チャイムが鳴って誰かが訪問してきた。そして私はうかつにも、それが誰なのか確認せずにドアを開けてしまった。
「――よう」
 ドアの縁に手が現われ、ぐいと一気にドアが開いた。その男は中に入ると素早くドアを閉め、不気味な笑みを浮べながら言った。
「よくも、俺を殺してくれたな」
作品名:輪廻 作家名:水木 誠治