輪廻
「べ、べつに俺はおまえを騙すつもりじゃなかったんだ。な、わかるだろ。本当さ。ただ俺はおまえを……」
下らない戯言を聞くのは、もうたくさんだ。はやくこの男を黙らせてやりたかった。私は如月に身体ごと思い切りぶつかっていった。想像していた以上に包丁の切れ味はよかったらしい。包丁は刃の部分が見えないくらいに、如月の腹に突き刺さっていた。
如月は驚いたような顔をして、数歩後退するとしりもちをついた。私はこれで終わらせるつもりはなかった。突き刺さった包丁を抜くと、今度は如月の胸をめがけて振り下ろした。
殺されたとき、私は何度くらい刺されたのだろう?
刺された数の倍は、刺し返さないと気が治まらない。私は力と憎悪をいっぱいに込めて、両腕を振り下ろした。それから何度も――。
――一ヶ月後。
その夜、突然チャイムが鳴って誰かが訪問してきた。そして私はうかつにも、それが誰なのか確認せずにドアを開けてしまった。
「――よう」
ドアの縁に手が現われ、ぐいと一気にドアが開いた。その男は中に入ると素早くドアを閉め、不気味な笑みを浮べながら言った。
「よくも、俺を殺してくれたな」