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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  3話  『サイセイ』

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…まぁ、ミナが大丈夫って言うんだからこれ以上無理に聞いてもしょうがないな。
-でも、それなら

俺は歩いている足を止め、その場に立ち止まる。

「わかったよ。ミナがそこまで言うなら俺はもう聞かないよ。だけどなこれだけは約束しろ」

「え?…何ですか?」

ミナも足を止め、俺の方を真剣な眼差しで見つめる。

「困ったときとかあったら絶対俺に相談すること。わかったか?」

「…あっ。……はい!…ありがとう、ヒナちゃん」

ミナはにぱぁと満面の笑みで微笑んでいた。
まぁ今はこれでいいかな。ミナが元気になってくれればな。
俺たちは再び止めていた足を動かし、人気のない薄暗い夜道を歩き出す。

ミナは怖いのかさっきからずっと俺の服の裾をがしっと掴んでいた。
魔法使いでもミナはミナだよな。昔から全然変わらない。っていうかそのまんまだ。
ここまで変わらないのも珍しいんじゃないか…?

でも敢えて言うなら口調は変わったよな。
昔は、こんな丁寧語でなんか話さなかったし…。
っていうか俺とミナって同い年のはず…。なのに、なぜか俺には丁寧語……。
よく考えたらなんか変だよな。年上でもなければ尊敬されるほどの器でもないし……。

だからといってミナにやめろとなんか言えないし…。
って別にいやっていうわけじゃないぞ。でもなぁ……うーん。

「ヒナちゃんどうしたんですか?もしかして体調でも悪いんですか?」

俺が考え込んで黙ってしまったせいかミナに心配されてしまったようだ。
ミナはおろおろわたわたして、おずおずと俺を覗きこんできた。

…そうだよな。
いくら魔法使いだろうが口調が変わろうがなんだろうがミナはミナなんだよな。
別にそんなこと気にすることじゃないじゃないか。

俺はミナの顔を見ていたらさっきまでのことなんかどうでもよくなっていた。

「ハハハ。何でもないよ。悪いな、心配させて」

俺はミナの頭をわしわしとがむしゃらに撫でてやる。

「ふぁ…。そうですか、それならよかったです」

ミナは目を細めて気持ちよさそうに頭を撫でられていた。
…ホント可愛いやつだな。

そんなやり取りをしている間に、いつの間にか俺の家に着いてしまった。

「あっ、そうだ。ミナ、俺の家に寄ってけよ。傷の手当してやらんといけんし」

「はい。ヒナちゃん、ありがとう…」

「別に礼を言われることじゃないって。傷の手当くらいでよ。それぐらい当然だ」

「いいえ…そのこともそうなんですけど。あの…その…、さっき私を助けてくれたことです」

あぁそのことか…。
まぁ成り行きとはいえ結果的にはミナを助けたわけだが…。
でも、それはこの力があってこそ助けることが出来たわけで、別に俺のおかげじゃ…。

そういえば俺はミナが魔法使いだったことは驚いたが、ミナは俺がこの力があったことに驚かなかったな。…知ってたのか?

まぁ、ミナは魔法使いなわけだからそういう力を感知する力とかあるのかもな。

「そんなの別にいいよ。まぁ、みんな無事だったわけだしよ。俺はそれだけでホントよかったと思うから」

「はい。でも…、私は嬉しかったです。ヒナちゃんが助けに来てくれて…。あはは。ホントに……」

そう言って、ミナはぽっと頬を紅潮させる。
何だか微笑ましいような、照れてしまうような気になってしまった。

「まぁミナが嬉しいんならそれでいいけどな。…んじゃこんなトコで話してるのもアレだし家に入るか」

「はい」

俺たちはようやく家路につこうとしていた。が、

「たたいま~……ってわぁ!びっくりした!」

ドアを開けると、玄関でじとっとした目をして明日香が待ち構えていた。

「お兄ちゃん~!!遅いよ~っ!!一体どこで何してたの~!!ソース買うだけなのに何で2時間もかかるの~!!ボク、もうちょっとでお腹ペコペコで倒れるかもしれなかったんだからね~!!」

明日香は、プンプンと怒りながらお腹を擦っていた。

「わ、悪かった。ちょっとな…。説明すると膨大な時間がかかるから端折るけど、まぁ簡単に言うと大人の諸事情とだけ言っておこう」

「何が大人の諸事情だよ~!そうやってまたボクを子供扱いするんだから~もう!お兄ちゃんったら」

さらに明日香はプンプンと効果音に出そうなくらい怒っていた。
って、いつ俺が子供扱いした?……もしかして、『大人』って単語にか?
別に意識して言ったわけじゃないが……。ホント明日香って子供だな。

「あ…あの」

「あれぇ?ミナちゃん?今晩は~♪ってもしかしてお兄ちゃん、ミナちゃんと一緒にいたの?」

「ま、まぁな。コンビニの帰りに偶然遇ってよ。それでな」

「そうだったんだ。でも、何でそんなに時間がかかるの?それも2時間も。ねぇ、ミナちゃん……何…して…た…の……」

…何だ?明日香のやつ急に黙って…。
それにミナを見つめたまま……うぅん?

「あ…明日香ちゃん?」

ミナは心配したのか明日香の顔を覗きこんでいた。
すると明日香は、

「お…お兄ちゃんが純粋無垢なミナちゃんをキズモノしたああぁぁああああ!!」

「なぁにぃいいいぃぃッ!!ってそれ微妙に意味違あああぁあああぁうッ!!」

俺の突っ込みがご近所全体に轟くとともにこの日の夜は更けていくのだった。


<次回へ続く>