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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  2話  『壊レユク現実』

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ホント、ヒナちゃんはとってもやさしい。こんな私でも、普通に接してくれて…。

「まぁそうですね。一人で抱えるより誰かに相談すべきですよね」

私がそう決意している時だった。

「こ…この反応は!!…くっ…急がなきゃ」

私は、バタッと荒っぽくドアを開け、部屋を出た。




「はぁ~。やっぱここのコンビニ遠いぜ」

作るならもっと近くに作ってくれよな。
…まぁ、俺がどうこう言ってもどうなるものでもないけどな。
俺は明日香に頼まれたソースを買いにコンビニまでほいさと出かけて行って、パパっと買うものを買い、ついでにむふふ~なマンガを買ったのは内緒だ。

それで買い物が済んだ俺は今、等間隔で立っている街灯があるにもかかわらず、ちょっと薄暗い住宅街を歩いていた。

大通りから外れているため、この時間になるとあまり人通りもそんなにない。
いるとしたら食べ物を求めてゴミ箱漁る野良犬や野良猫。それに、俺の頭上をやんわりと照らしているお月さんくらいだ。

「今日は満月か」

こんな満月の日に、虹ヶ坂公園で花見するっていうのもオツだよな。
まぁ、満月の日じゃなくてもいいんだけどな。
暇なら今度みんなを誘って花見するのもいいかもしれないな。明日香と冬姫あたりははりきって弁当とかたくさん作りそうだしな。

…まぁ、たまにはそういうのもいいかもしれんな。

と俺がそう思いにふけって歩いていると、前方から見知った人物がやってきた。

「よっ、まどかちゃんじゃないか」

間違えるはずがないその愛らしくゆさゆさ揺れるツインテール、どこからどう見てもまるで妖精を思わすような愛らしいお姿。正しくまどかちゃんだ。

「ひ…雛月先輩。こんばんわです」

ペコリとお辞儀するまどかちゃん。

「どうしたんだ?こんな時間に?学校の帰りか?」

「いえ。塾の帰りなんです」

「へぇ~えらいなこんな時間まで勉強なんて。俺なんか勉強はテスト近くにちょこっとやるくらいだぜ。ハハハ」

なんか自分で言っていて情けないな。

「別にえらくないですよ。私、昔から体弱くてよく病気がちで学校休むことが多いんです。そのせいで学校の勉強にも全然ついていけなくて…」

そういえば冬姫に聞いたことあるな。まどかちゃん、中学の時からよく体調を崩して保健室に行って休んでるって。

そのせいで中々クラスにも馴染めてなかったことも…。

「それで仕方なく塾で勉強しているんですよ。本当は学校でみんなと勉強したいんですけどね…。私の通っているとこ個人塾で私一人ですし…。かと言って塾やめても自分だけでやっていく自信もないですし。ただ今は一生懸命頑張ってやるだけですよ」

まどかちゃんは、なんだか寂しそうな表情でそう答えた。
確かにな…、一人で塾なんか勉強するよりみんなと勉強したいよな。
俺はしないけど……。でも、まどかちゃんは…。

俺は想像してみた。学校で体調を崩し保健室で休んでいるまどかちゃんを。
みんなは教室で別に楽しくもなんともないけどみんなで勉強している。しかし、その一方で、一人寂しく保健室でみんなと勉強したい…けど保健室で休まざるを得ないまどかちゃんがいる…。

きっと凄くつらくて寂しいにちがいない。もし俺だったらそんなのごめんだね。
そして、まどかちゃんはにこっと笑いこう言った。

「だからこの虹ヶ坂学園という新しい生活スタートでは、学校で勉強ができるように、クラスのみんなと一緒に生活できるように頑張っていきたいと思っているんです。塾はいやですけど、でもみんなと一緒に勉強がしたいから。ですから出来るだけ学校の勉強についていけるように頑張っていきたいと思います」

まどかちゃんはさっきの寂しい表情とはうって変わって真っ直ぐな瞳でそう答えた。
そんなまどかちゃんの話を聞いて、俺は、素直な気持ちでこう答えた。

「そうか。でもやっぱ、まどかちゃんはえらいよ。…うん、えらい。その素直でひた向きに頑張り屋なトコとかな」

「せ…先輩?」

俺はまどかちゃんの頭をわしわしと撫でてやる。

「まぁ俺は頑張れとは言わない。でも、まどかちゃんのこと応援してるからな」

「は…はい。ありがとうございます。雛月先輩」

まどかちゃんは、少しだけ元気になったのか俺に微笑ましい笑顔を見せてくれた。

「それじゃ…。えーと、まどかちゃんの家ってこの近くなのか?」

「はい、そうですけど。どうしてですか?」

「いや、もう遅い時間だし、女の子が一人で夜道は危ないなと思ってさ。だから家まで送っていってやるよ」

「え…あの、悪いですよ。私は大丈夫ですから。私の家もう本当にすぐそこなので」

「そうか?それならいいけどな」

「でも、嬉しかったです。先輩が私のことを心配して下さってくれて」

頬を赤らめるまどかちゃん。
まぁ、まどかちゃんって見た目小柄だから余計に気になるっていうかなんというか…。

「じゃ、気をつけて帰れよ。また学園でな」

「はい。雛月先輩も気をつけて下さいね」

そう言うとまどかちゃんはペコリとお辞儀して、さっきまで俺が歩いていた方向へ歩き出した。俺はまどかちゃんの姿が見えなくなるまでその場で見送り、見えなくなったのを確認すると俺も家に帰ろうと歩き出す。

ちょっと遅くなったな。急いで帰ってやらないと明日香の奴、今頃腹減って待ちくたびれてる頃だろう。俺も腹が減った。…しょうがない…走るか。
俺はそう思うと、かったるかったが小走りで駆け出していた。

-だが、その時

「きゃあああ~!!」

俺の後ろの方向から叫び声がした。さらに、ピカーンと何かが突き抜けていくようなそんな感じを感じた。

「な…何だ!?今の叫び声は!?それに……何だ今の反応?……どこかで」

そうだ。
それにこの声……、まどかちゃん!!
いやな予感がした俺は、来た道を急いで引き返した。




「はぁ…はぁ…はぁ」

くそッ!!どこだ!!まどかちゃん…ッ!!!どこにいるんだよッ!!!!

俺は夜道を駆けていた。
さっきから来た道を道なりに進んでいる…はずなんだが一向にまどかちゃんの姿が見えない。今は何時だ。くそ、携帯も置いてきちまったから分からない。

まどかちゃんの叫びで急いで引き返したが見つけたのは、ここに落ちていたまどかちゃんが持っていた可愛らしいバッグだけだ。

月は出ているが、どういうわけか薄気味悪いくらい異質に暗い。
ただでさえこの暗がりだ。月の光さえ遮ってしまうほど夜道が闇に包まれていた。

……この状況は何だ??一体、ここで何が起きたっていうんだ?

急にまどかちゃんの叫び声が聞こえたかと思ったら、そこにはまどかちゃんの姿はなかった。ただ持ち物だけがそこに残されている……だけなんてよ。

…何だよ、これ??
ありえねぇよ……ありえねぇって。わけわかんねぇよ。

だって今、別れたばっかだぜ??じゃあなって言ったばっかなんだぜ??
偶然にまどかちゃんと会って、話して、にこってまどかちゃん……さっきまで笑ってて、俺、心配でまどかちゃんが見えなくなるまでこの目で見送ったんだぜ??

それなのに何だよ……??
…何でこんなことになるんだよ!?