光と陰、そして立方体
表面だけやったらアカン
光は家の前まで来ると、必ずすることがある。まずは自宅アパートの周囲を確認、人の気配、駐車車両、自分の家の灯り。
「よーし……」
周囲には誰もいない。最近気のせいかも知れないが、自分の家を何者かがうろちょろしているような気がする。心当たりはあるが、自分には関係がない。しかし相手にしたくないので毎日こうして家に近づいたら周囲を確認することにしている。
光はポケットから鍵を出して自宅の扉を開けたかと思うと素早く扉を閉めた。
玄関を越え、部屋に入って靴を脱ぎ、100円ショップで買ってきたプラケースの上に置き、ランドセルを置いて椅子に座ると一息つく。物音がしない。今日は「凪」の日だ。
それを確認して光は隣の部屋の襖を数センチだけ開けて、部屋を覗いた。
「ねえ、真凛」光は布団の固まりに向かって名前を呼ぶが返事はない。いつもの事なので驚きもしない「今日はいるの?」
しばらくの間家が静まり帰り、布団がもそっと動き出すのを光は確認すると、光は「はいはい」と言って、早々に準備をして「いつもの所」に駈けて行った。
作品名:光と陰、そして立方体 作家名:八馬八朔