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田 ゆう(松本久司)
田 ゆう(松本久司)
novelistID. 51015
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みちくさ(後編)

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みちくさ(後編)

1) すべてが合併からはじまる?
 わが町は平成17年に郡部5ケ町村とともに隣市に合併された。しかし合併してなにかいいことがあったのか。そろそろ正しい判断ができる頃だと思う。合併の趣旨はともかく財政の赤字減らしのために行われたのは周知である。
 実は合併2年前にわが町の町長選挙が実施され、かく言う私も町長選に立候補した。とにかく合併を阻止したかったのだ。ところが大半の住民は合併に期待を寄せていたのであろうか、ほとんど孤立無援の中で私は惨敗した。
 当時、もし合併しなければわが町は衰退し住民サービスが受けられなくなるという脅し文句がまことしやかに流布していた。選挙運動中にも住民から町単独でやっていけるのかと心配する声が投げかけられた。岐阜県は国の方針にやすやすと乗ってしまった。他県を見ると合併阻止を貫いた気骨のある町村がいまも健在である。
 合併したところで市の財政が恒久に良くなるわけでもない。案の定溜め込んだ財産は没収され挙句の果て郡部は切り捨てられる。僻地に暮らす住民の声が届かないのをいいことにして住民負担を押し付けてくるようになる。
 かつて高度経済成長が農村の衰退をはじめとした諸悪の始まりだと考えられたがいまや諸悪の根源は合併にあり。わが町にそぐわない市民憲章を唱和させられる羽目になってしまったのである。(清流と山野の郷土である郡部は市民憲章に謳われる刃物のまちとは縁もゆかりもない)

2) 限界集落に住んでみて
 いわゆる高齢化率が50%を超える集落を限界集落と呼ぶそうだが、なにが限界なのか定かでない。わが集落は高齢化率でみれば50%を少し超えたところだが、中には勢いあまって子をなすほどに壮健な高齢男女がいるという未確認情報もあり、集落の機能が維持できなくなる気配は今のところない。
 確かに以前と比べれば耕作を放棄し減反政策に便乗して食い扶持を稼ぐ高齢者が増えてきたのは否めないが、彼らは押しなべて75歳以上であり、よる年波には勝てないということらしい。だから75歳以上の高齢者を対象とすれば限界集落のイメージに一歩近づく。
 問題はこうした集落を今後どう誘導していくかである。学校の統廃合と同じ手法で限界集落を中核的集落に統合して機能を維持させようとする方法は結局のところ縁辺部は切り捨てられて共倒れとなる公算が大きい。それには抜本的な再生手法がなければならない。
 行政にはもうこれ以上頼っても仕方がないので英国のGroundworkトラストのようなNPOの結成と集落再生のための思い切った規制緩和が必要だ。そのためには足かせとなる現行法の撤廃と再生に向けた新法の制定が必要となるがこれをやってみようという剛毅な政党があればいいのだが。