ihatov88の徒然日記
20 記念品 その2 6.19
『万年筆』
21世紀の現代、書類はPCで書くことが多くなりました。私が大学を卒業し社会に出たのは20世紀の終わり頃です。当時はPCではなくワープロと呼ばれるもので書類を書く人がおよそ半分、残りの半分は手書きでした。駆け出しの頃は外回りが主体の仕事でしたので、手書きで書類を書いてたものです。
それだけPCというものは普及がまだまだだったのです。オンラインの端末としてはありましたが、持ち運ぶことはありませんでした。書類をかいたら当然プリンタも要りますしね――。
確かに今はほとんどの書類をPCで書きます。しかし、署名する時や自分の手帳にメモを取る時などはやっぱり手書きです。結局当時も今も、仕事でもプライベートでもいろんな書類を手書きします。
最近では趣味で小説も少々書きます、え?知ってたって?そうですか、誰にも言ってないのに。
とにかく、仕事だけでなく日常で生活で誰でも何かしらの書類は書きますよね、多かれ少なかれ。
今回のお話はワタクシの記念品、その2。こういった「書く」ことに興味のある読者の皆さんが集まるトコロですので、皆さんも一本は持っているかもしれない、
「万年筆」
についてです――。
* * *
社会に出てすぐの駆け出しの頃は仕事にも余裕がなく、毎日の業務をこなすので精一杯でした。しかし、わからないなりにも元気とヤル気だけはあって、仕事を覚えようとバリバリ手書きでメモを取り、自分だけの虎の巻を作っていました。それで仕事を覚えていったわけですが、頭で覚えるというより書くという動作つまり腕で覚えたものです。自分で書いたものは確かに記憶に強く残っていて、今でもノートの〇行目くらいは覚えているから不思議なものです。手書きの強みですね。
それから社会に出て5年目の今ごろ、世間は日本でワールドカップが行われ大騒ぎしていた頃です。ベッカムやらロナウジーニョやらでフィーバーしてた頃です。
そのがんばりが認められたのか、ぺーの社員から主任に昇進させていただくことになったのです。そもそも出世の意欲は強くはないほうでしたが、先輩上司の推薦で上げていただけるのですから断ることはしません。そりゃ、嬉しいでしょ。素直に、給料上がるわけですから。
そして同じ年の秋、無事に昇進しました。順風満帆と言いたいところでしたが昇進と同時に地方に転勤となり、まだ首も座っていない長女を抱えて長年住み慣れた地域を離れることになりました。
そこは郡部だけに都市部の前任部所とはだいぶ温度差があって、それはノンビリしていました。新進気鋭?の主任はバリバリ仕事を……と思っていたところが、本性現したのか水が合ったのかどっぷり馴染んでしまい、都市部に帰るまでの間楽しく過ごさせていただいたのです。
遊んでた訳ではないですよ。遠い先は都市部に戻りもっと忙しくなって、仕事仕事仕事になる前のモラトリアムを社が与えてくれたと勝手に思い、家族サービスに全力の時間をつぎ込んだものです。そういやこの時に次女が生まれています(※第一話参照、よかったら読んでね)
そんな折り、家で仕事の書類を書きているとヨメが言うんです。
「せっかく昇進したんやから、何か記念品でも作ったら?」
「ほう、記念品ですか。いいねえ、それ」
特にコダワリってないのですが、昇進記念という響きは悪くない。そこで手にしていたペンが目に止まったのです。
「折角やから、万年筆が欲しいな」
ということで自分へのプレゼントは万年筆に決定したのです。
もし、あの時PCで書類書いてたらどうなってたでしょうね?とにかく、あの時はペンで書いてたのです、書類を。しかも出先でいただいた広告の社名入りの粗品のペンで。コレも何かの縁なんでしょうか――。
それから休日に街に繰り出して街に一つしかない百貨店に首が座った長女をベビーカーに乗せて行き、万年筆コーナーで店員の説明を聞きながら良さげなものを探したのです。
万年筆、といってもピンからキリまであります。値段もペンの堅さや文字や本体の太さ。さらに性差もあります、性別で筆圧も違うので合うペン先があるそうです。説明を聞くと、すっかり万年筆の魅力のとりこになり、どうしても欲しくなりました。
私は仕事で他言語の字を書くことがありますが、基本的に日本語の話者ですので、取るペンはやはり日本製のものが一番いいようです。ローマ字主体の人は欧米製のものが良いようです、奥が深いですね。
そこまで値が貼るものは手が出ませんでしたがそれ相応のお金を出して、結局私は14金のペン先のついた日本製の万年筆を購入し、名前を入れてもらいました。記念品です。一年1000円としたら10年ちょっとで元取れますから、まあいいかな。
皆さんもそんな節目の記念品って、ありますか?
* * *
こうして作った万年筆、職場でのPCの本格導入で手書きの機会は格段に減りました。確かに便利で、業務のスピードが革命的に速くなりました。それは良いことだと思います。
でも、それはそれで手書きの書類は味があって好きです。時間や合理化を必要としないトコロでは今もネーム入りの万年筆はまだまだ現役です。手紙や年賀状などの宛先はいまだに手書きで書いてます。
ただの自己満足ですが、私がこのサイトで書いている小説なども一部を手書きで書いてみて、その字面で物語のイメージすることがあります(全部ではありませんよ)。また違ったところが見えていいものですよ。
作品名:ihatov88の徒然日記 作家名:八馬八朔