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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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海の星

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 驚いたぼくはもう一度、今までお世話になった店をふりかえった。でも、そこに家はなく、広い駐車場だった。
「あの、すみません。となりの店は……」
 ぼくはそばの土産物屋に行って聞いてみた。
 すると、その店の奥さんは怪訝な顔つきでいろいろ話してくれた。
「店? ああ、ずいぶん前にあったっけ。もう三十年以上前だ。お兄さん、若いのによく知ってるね」
 奥さんの話によると、三十年前まではたしかにその店はこの場所にあったそうだ。
 都会から引越してきた初老の父親と病気の娘の家族。船長だったという父親は、世界中から集めた海のグッズを土産物として売っていた。ところが娘が亡くなったあと、父親は小船で沖に出たまま帰らなかったという。
 ぼくは頭の中が混乱して、お礼もそこそこに店を出ると、あてもなく渚を歩いた。
 どれくらいたっただろう。ようやく帰る気になったとき、白い星形の貝を見つけた。
 いや、それは貝殻ではなく、化石のように固く白くなったひとでだった。
「……ありがとう」
 ぼくはひとでをポケットにしまうと、海を後にした。
 
作品名:海の星 作家名:せき あゆみ