開けてはいけない
「沢村杏子って、少し複雑な家庭環境で育っててな、中学生の頃に両親が離婚して本人は母親に引き取られたんだけど、その後母親が再婚して、継父ができたんだ。だけどその後、継父が亡くなって、また母親と二人になっちまったんだ。」
「よくある話だな。」
「で、葛城が沢村を透視したところ、沢村の守護霊は沢村の父親だそうなんだ。それで、葛城がその守護霊である沢村の父親と会話して、沢村が小学校の頃のエピソードを聞きだしたんだよな。」
「あれ、沢村の両親は離婚してて、実父は死んでたのか?」
「そこだよ。死んだのは沢村の継父の方で、実父はまだ生きてたんだ。」
「それはおかしいよな。」
「その通りさ。沢村の両親が離婚したのは、沢村が中学校の頃だから、死んだ継父が沢村の小学校時代のことを知っているはずがないんだ。つまり、葛城はまだ生きている沢村の実父を守護霊にしちまったんだ。」
「単なるリサーチ不足だな。」
「ああ、今ネットではこの話で盛り上がってるぜ。」
「で、沢村杏子の反応はどうだったんだ?」
「さすが、売れっ子アイドルだな。しっかり大人の対応をしてたよ。」
「どっちにしても、葛城はもうだめじゃないか。」
「ああ、きっとこの後、マスコミからフェードアウトして行くさ。」
「いい気味だ。あんな嘘八百並べて金儲けしていたんだからな。」
「もう十分稼いだだろう。潮時だよ。いずれどこかでへましてたさ。」
加治はそう言ったあと、自分のスマートフォンを取り出した。
「そうそう、今ちょっとしたマイブームになってることがあってな。」
加治はスマートフォンを操作すると、液晶画面を俺に見せた。画面には、何かの画像が写っている。
俺はスマホを受け取って画像をよく見てみた。小さな女の子が写っていた。その女の子はスカートを穿いているが、スカートからは足が一本しか出ていなかった。
作品名:開けてはいけない 作家名:sirius2014