開けてはいけない
Ⅵ
昨日の夜、2時半頃に目が覚めた。
遠くからなにかを引きずるような音が聞こえた。
どうやらベランダから聞こえて来るようだ。
俺の部屋はマンションの1階のため、外から犬か猫でも入り込んだかと思い、サッシのガラス越しに見てみたが、ベランダにはなにもいなかった。
しかし俺は、ベランダになにもいないのを、確かめたくて仕方がなかった。
ベランダのサッシを、開けたくてたまらなかった。
頭では、開けちゃいけないってわかっているのに、体が勝手に動いてしまいそうになるんだ。
昨夜はなんとか耐えることができた。
今、夜中の2時半。
俺はベッドに横たわったまま、あの音を聞いている。
音がする方に行きたい。
ベランダのサッシを開けたい。
俺はさっきからその誘惑と戦っている。
果たして今夜、この誘惑に勝てるかどうか、俺には自信が無い。
そして、ベランダのサッシを開ければ、次はリビング、そしてその次は廊下からこの音が聞こえてくるであろうことも、分かっていた。
それでも俺はベランダのサッシを開けたい。
俺はいつまでこの誘惑に耐えられるだろうか。
完
作品名:開けてはいけない 作家名:sirius2014