小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ゾディアック 11

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 
~ 75 ~

病院の待合室で、私は白い壁を眺めていた。
周りには沢山の人達が、座って自分の順番を待っていた。
隣同士で話をする人、本を読む人、 目を閉じて眠る人

ザワザワザワ ・・
ザワザワザワ ・・

黒い影が、幾つも筋になって
座っている人達の背後から立ち昇っていた。
天井の隅からも 別の暗闇が、霧のように湧き出て
黒い影と合体し、大きく膨らんでいくように見えた。

白い壁は一面、蠢く黒い影にビッシリと覆われていた。
沢山の人が座る長椅子の遥か向こうの端に
一点だけ、ポウッと白く光っている場所があった。

「 あそこは・・ 一体何だろう 」
そう思った瞬間、自分の名前が呼ばれた。
診察室に入って、医者の前に座った。

医者は胃カメラの写真を見せながら言った。
「 ここに・・ 黒い痕が見えますか?検査入院を勧めます 」
そこには、小さな十字の焼印のような痕が映っていた。
「 おそらく・・初期の癌でしょう。でも早く見つかって良かったですよ 」

母は癌で亡くなっていた。確かに遺伝的な確立は高かったが ・・
胃腸の辺り・・鳩尾の 第二、第三チャクラに、今自分が遭っている霊的な問題を
この医者に説明出来るすべは・・ 何も無かった。
もし一言でも言えば、それこそ精神科に入院させられるだろう。

第二、第三チャクラは 授容の愛と自己アイデンティティの確立を促す。
インカネーショナルスター魂の目的

医者は入院の日程が決まり次第また連絡すると言い、私は部屋を出た。
「 厄介な事になった・・ 」
月食を見てから、全てが振動し人の話しがアヒル声に聞こえ
聴覚検査に行った時の事を思い出した。
あの時も、判らないまま 医者に眼圧を変える劇薬を飲まされて吐いた。

この世界は 現象的に外に見える事のみを真実とする、野蛮な三次元だ。
きっとモルモットにされるだろう・・ 私はゾッとした。
「 だから、医者と坊主と政治家は嫌い・・ 」ぼやきながら待合室を通り抜けると
先程 ポウッと光っていた場所に、小さな女の子が母親に付き添われて座っていた。

その子の周りには沢山のキラキラ煌めく光子が、蛍のように集まっていた。
妖精のような小さな身体は、難病を抱えた子供のようだった。
待合室にびっしりと蔓延る黒い影は、その女の子の周りで 次々に浄化され消えていった。

「 人の形をした精霊・・ 」
不浄な場所には、時々そういうのが降りて来ている。


ボーデー・・ ボーデー・・
ハーラーボーデー・・
ボーデー・・ ボーデー・・
ハーラーボーデー・・


お経のような声がして、待合室に座っている人たちが
女神島 観音寺院の参道で 暗い木立に並ぶ石像たちの顔に見えた。
その形相は、様々に顔を歪め喜怒哀楽の表情を浮かべて、
頻りに何かを唱えていた。

ここは意識の闇の世界・・外に閉じ込められた五感
状態の次元が真実、頭は使ってるだけ・・ 頭は使ってるだけ・・
観音とは・・ 振動を音と認識する究極のリアリティ

様々な外刺激を受け 人間は病んでいく。
頭に支配されたマインドと魂を映したハート
ここでは、光と闇は 同時に存在している。


~ 76 ~

闇の中、フワリ・・ 一枚の羽根が舞い落ちて来た
掌で受け止めると、それは花びらに変わった。

「 サラクエル・・ 」

気が付くと、 一本の桜の木の下に立っていた。
嵐が吹いても 雪が降っても、決して散らない
8か月間咲き続ける あの桜

コノタネガ・・
マガタネナラバ ケッシテサクマイ
コノタネガ・・
マサタネナラバ エイエンニサキツヅケルデショウ

コレカラハ ヒトデハナク
アセンデットダケヲ アイテニシテ ・・

「 アセンデットだけを・・ 」私は目を覚ました。
「 夢か 」

携帯が鳴り、出るとけたたましい声が響いた。
「 マリオン、どういう事だ! もっとデカい病院へ行け」
「 ああ・・ 親父?大丈夫だよ・・ 心配かけたな 」
ユシュリのやつ親父に余計な事を、一番面倒なのに知れてしまった。
私は心の中で呟き、電話を切るとベットから出てシャワーを浴びた。

サロンで、暫く休むかもしれない事を告げると
ミオナは少し心配そうな顔をしたが 努めて明るく振る舞った。
「 大丈夫ですよ! マリオンさん、きっと・・私信じてます 」
「 ガブリエルに言われると安心だ 」私は笑った。

「 これは・・ 古来 陰陽師が、もののけを追い払う為に使っていた祓いの言葉だそうです 」
そう言ってミオナは一冊の本を私に渡した。
それは、呪文を唱え霊を招き寄せては 意中を語り、呪詛や占いを業とする
あずさ巫女と呼ばれた、前世のミツコの専門だった。 
呪咀を祓い除く呪術を心得ている者は、呪咀を人に送りつける呪術も心得ていただろう。


更衣室で着替えていると、戸が開く音がして 誰かが入って来た。
そして私の背後で低く言った。

「 撒いた種は 返って来る・・ 」
背筋がゾッとして、振り返るとミクが立っていた。


ココロヲダシテハイケナイ
ナカヲ ミテハイケナイ

ダカラ イッタノニ
クスクスク・・

金髪の少女が笑っていた。


突然フラッシュバックが起こり、ミクとタロッシュをした日が蘇った。
三枚目 未来を示すカードは、剣のペイジだった。
剣を持った少年が、彼方を見据えて荒野にたたずむ様子が描かれていた。
無邪気さや子どもっぽさ、気まぐれ、また 強い好奇心を表す。

暗示するメッセージは、秘密に関わる事の真意を知りたいと思い
危険を犯してしまう可能性と、それによる予期しない展開だ。

「 これを見て、何を感じる? 」あの時 私はミクに聞いた。
「 何か・・見つけたいものがあって、旅立つ前に剣の練習をしています 」 
「 剣の練習?誰かと戦うの? 」 
「 危険が待っているかもしれませんから・・ 用心してます 」
「 そうか、森には危険が潜んでるかもしれないものね 」私は言った。

フラッシュバックは消え、薄ら笑みを浮かべたミクが 目の前に立っていた。
クスクス・・
「 あれは・・ 私に言ってたんだね、ミク 」私は言った。
過去世のマインドの森に棲む少女を 今、一緒に迎えに行っていた。


帰りに 実家に寄ると、家には灯りが点いていたが、何故か暗い感じがした。
「 デミ?・・ユシュリ・・ いるの? 」私はドアを開けた。

グァルルルーーッ!!!
いきなり黒い獣が飛び掛り、私の腕に噛みついた。
「 うわっ!!」とっさに払い避けたが、腕からは血が出ていた。
グルルル・・唸り声を上げながら、また今にも飛び掛りそうな獣は
ユシュリの飼い犬のテリアだった。

「 まあ、だめよ!」デミが出て来て犬を抱き抱えた。
「 大丈夫?マリオンさん!血が・・ 」
「 ああ、大丈夫。大した事無いから 」私は腕を押さえながら言った。

「 犬をゲージに入れとけ、すまんなマリオン 」ユシュリが奥から出て来た。
何か、暗い冷気が・・ 結界のように部屋に充満して
まるで邪魔者を寄せ付けないかのようだった。

「 今日、ミツコがデミに電話をかけて来て、酷い事を言ったらしい 」
作品名:ゾディアック 11 作家名:sakura