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祈り

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《守るものがあるから》

考えてみたら
あたしは
この子たちのために
この家のためにと
いいながら
常に《自分自身》を
守ってきた。

なにかのために
自分を犠牲にすることなど
極論をいえば
自分自身が
心身ともに健康であること
その上に
家族のしあわせが
成り立っていると
そういって
自分の言動を正当化し
楽なポジションを探りながら
今まで生きてきた…
ような気がする。

あたしは《言葉上手》だ。

ほんとに
そう思う。

今朝ね
灯油が切れたんだよ。

昨日はこちらでも
寒い風が吹いて
夜になると
ちらほら小雪が舞ってた。

とても寒がりなあたしは
冷たくなった手足を
温めるには
暖房器具が必要でね…。

灯油買わなきゃって
ポリ容器を積んで
会社に来たんだけど

被災地の方々
寒い体育館の床の上に
薄い毛布を敷いて
冷えた身体を寄せ合って
助け合いながら
励ましあいながら
暗くて
つらい夜を
過ごしてるんだと
思ったらね…。

この一缶のポリ容器に
灯油を注ぐことが
申し訳ないような気がした。
作品名:祈り 作家名:遊花