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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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Wish プロローグ4

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「そうですか?私は、とても楽しかったんですよ~。あの時の私は、お屋敷の中での生活しか知りませんでした。でも、ヒナちゃんに会ってからは、何もかもが新鮮で、私は、嬉しかったんですよ」

ミナは、本当に嬉しそうな顔で答えていた。

「ハハハ。そう言ってくれると助かるぜ」

ミナって、ホントいい娘だな。かえでにも見習わさせてやりたいぜ。

「そういえばミナの家って俺の家から近かったよな?…確か」

「はい、そうですよ。よくお泊りに行ったり、一緒にごはんを食べたりしましたよね~懐かしいです」

「あぁ、そんなこともあったな…」

あの時は、知り合って間もないのによく一緒にいたよな~。
というか俺だけじゃなくて俺たちの親同士も仲良くなってたし。

「では、そろそろヒナちゃんのお家に行きましょうか」

「ん?そうか。わかった。じゃ、そろそろ行くか」

「はい♪じゃ、ヒナちゃん、家まで競争ですよ~♪よーい……ドン」

ミナは、人目が少なくなったおかげか、俺から離れてパタパタと走り出した。
ははは…相変わらずだなミナの奴。
あれじゃ子供の時と大して変わらないぞ、あははは。

あれ??
でも…ちょっと待て。さっき、ミナは…何て言った?

『じゃ、ヒナちゃん、家まで競争ですよ~♪』

ミナのやつ…俺の家…知ってるのか?
確かこの街に来るのは久しぶりで、それで、迷ってたんじゃ……だとすると…。
………。

「うわああああぁぁああああッ!!!ミナ、ストップだッ!!ストップッ!!!また、迷子になるぞ!!!おーい!!!」

走り去って行ったミナを追うべく、俺は必死に後を追った。




「ハハハ。ミナってホント、おっちょこちょいだな」

「う…うぅ…うぅっ…ぐすっ…えぅ」

ミナは、あの後、すぐに見つかった。
俺が見つけた時には、もうすでにみーみー泣いており、ミナは、俺がいるのがわかると、泣きながら俺に抱きついてきた。

あの時のミナ…可愛かったな。
と俺が思ったことは、ミナには内緒にしておこう。

「ほら、ミナ、もう大丈夫だから。俺もちゃんと一緒にいるからな~大丈夫だから…な?」

「うぅ…ぐす…う…うん」

「ははは…。ほら、もう大丈夫だ。よしよし」

俺は、気が付くとミナの頭を撫でていた。

「ふふふ♪ヒナちゃんは、やっぱり昔と変わらない昔のままのヒナちゃんだね」

ミナは、泣き止んで嬉しそうに微笑みながら語っていた。

「え…そうなのか?」

「うん。その頭を撫でる癖もやさしいトコも」

「やさしいって?俺がか?」

「うん!ヒナちゃんは、昔もよく泣いていたミナをいつもこうやって、慰めてくれた。なんだかねヒナちゃんが頭を撫でてくれると不思議と心が暖かくなって落ち着くの。まるで魔法みたいに」

ははは…。
ミナったらオーバーだな、魔法みたいだなんて。
まぁ、『魔法』って表現は女の子みたいで可愛いけどな。

「だからね、私、ヒナちゃんが頭撫でてくれるの大好きなんだ~。どんなにつらくてもそれだけで頑張れるんだよ」

「そ…そうなんだ。ははは…」

俺は、何だか気恥ずかしい気持ちになってつい話を逸らしてしまった。

「ほらミナ、着いたぞ」

「ありがとうございます。わぁ、昔と全然変わっていませんね。私の昔の記憶の中と同じです」

「まぁ、そうだろうな。別に改装とかしてないもんな」

「ふふふ、確かにそうですね」

ミナは、くすくすと笑い出した。

「じゃ、とりあえず、中に入ろうぜ」

そう言うと俺は、ミナを俺の家に招きいれた。

「ただいま」

「おかえり~お兄ちゃん♪今ね~ユ……ちゃんが…」

明日香は、なぜか俺らの方を見るやいなや時が止まったようにじーっと停止していた。

「どうしたの~明日香ちゃん?今、ハルちゃんの声が聞こえた…ような…」

そして、明日香に続いて冬姫までもが停止していた。
…って、何なんだ?

「おい、二人ともどうしたんだ?」

すると、明日香は、とんでもないことを口にした。

「お…お兄ちゃんが…お兄ちゃんが……犯罪者になっちゃった~!!」

「は?」

明日香は、いきなりとんでもないことを言いやがった。
俺が、犯罪者?ホワイ?

「って、何で俺が犯罪者なんだ?!説明しろッ!!」

「だ…だって、お兄ちゃんの後ろの人」

と、いつの間にか後ろに隠れていたミナを明日香は指差す。

「ミナがどうしたよ?」

「どうしたって……ねぇ、ユキちゃん」

「あ…あのね、ハルちゃん…恋愛することは自由だけど…子供とは犯罪なんだよ」

思わず俺は、ミナの方を見た。確かに小柄だ、しかも童顔。
なるほどな、知らない奴から見れば小学生と見間違えるかもしれないな。
それに、このうるうると潤んだ目から放たれる破壊光線…いや、ビッグバンというべき破壊力はあるだろう。

これには男心を擽るこの溢れんばかりの『守ってあげたい』感がこみ上げてくる。
そして、極めつけはこの恥ずかしがり屋ですぐ隠れてしまうという要素。
大抵の男子諸君ならば瞬殺…いや秒殺されるだろう…いや、する!俺は、するね。
断言してもいい。

それで、恥ずかしいばかりに頬をほんのりと赤らめ必死になってきゅっとしがみ掴まれてみろ!さぁ想像だ、妄想だ。タイムリミットは3秒。

3、2、1。
ちゃんと描けたか??そうだ、その調子だ。
さらにさらに、それを引き離そうとするといやいやをして更に服の裾をぎゅっと掴まれてびえーんと泣きじゃくってくるんだ。
それを見た者(こっち属性)は一瞬でイチコロとなるであろう。

ど~だ、段々と君たちにもわかってきただろ~このすばらしさが!
理解できん奴がいたら教えてくれ、俺が直々に指導してやる。

「ほうほう…。春斗はロリコンっと……」

「違うわい!って、かえでもいたのか?」

「まぁね~。おかげでいいモノ見させてもらったし☆」

「何だよ、いいモノって?」

「これだよ♪『エロゲ主人公とちみっ子のいけない恋愛パラダイス☆』の犯罪の現場♪」

何だよ…そのアレなタイトルみたいなネーミングは…。
いや…かえでの場合はギャルゲーか…。

「って、違うわ!これはだな、別にやましいことはなくて…」

「ぐすっ…。お兄ちゃん…お兄ちゃんはボクという可愛い妹がありながらこ…こんな小さな女の子に手を出すなんて…。ぐすっ…ボク……お兄ちゃんのこと……信じていたのに……うぅ…」

すすり泣く明日香。
……って、ちょっと待て。

「だから、俺の話を…」

「ハルちゃん……」

冬姫は、今にも泣き出しそうな顔で不安げに俺を見つめてきた。
…って泣いてるし。
はぁ…全くどいつもこいつも。…あぁ、かったる。

「あぁ…お前ら…。何かすごーく変な誤解してるようだから簡単かつ手短に説明すっからよく聞けよ」

俺は、事の一部始終をこいつらに話し、俺への疑いの目を何とか理解してもらうために、

「なんだ~ハルちゃんのお友達だったんだね~。私ね、もしかしたら、ハルちゃんがグレちゃってそっちの道に走っちゃったのかと心配しちゃったよ」

「グレるかぁッ!!」

…一体何にグレるんだよ。
それに何で俺がグレると『そっち』に走るんだ?
作品名:Wish プロローグ4 作家名:秋月かのん