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ゾディアック 10

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ユシュリの手を握り、少女は息絶えた。
たった5年生きただけの、千年前の・・私のカルマだった。


クスクス・・ クスクス・・

アンタノカルマ ミーッケ
ホラ、イッショダヨ

金髪の少女が私に人形を手渡すと、人形は見る間に
焼けただれて溶けていった。
金髪の少女の身体も顔も周りは炎に包まれ、私の鳩尾から
全てが煉獄の炎に焼かれていった。

ギャアーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

自分の叫び声で、飛び起きた。
身体は生汗でビッショリ濡れ、心臓がバクバクして飛び出そうだった。
鳩尾がキリキリと痛み、腹を押さえながら ふと見ると、
キャビネットが開いて、ブルネットの人形が床に落ちていた。


~ 74 ~

魂ちはゆ
冬籠りせね御代なば

今もこの花
春にかはらず



「 おはよう・・ ミク、これをあげるよ 」
更衣室に入るなり私は人形を手渡した。
「 わあ、可愛い。ブルネットの髪・・ 」箱を開けて、ミクが言った。
「 気品があって・・ いいですね。まるで、学校の先生みたい 」
ミクは気に入ったようだ。

モーリィとミオナが入って来た。
「 わー、何そのお人形?変なのー 」モーリィがミクをからかった。
「 人形は臨床心理療法の一つだよ 」私は言った。
「 心の奥底に眠る感情を呼び覚まし、自分を縛っていた鎖を解いて 自己治癒力が始まるのさ 」
私はモーリィの顔に人形を並べて見比べ
「 ・・今とは全然キャラが違うな 」と言った。

「 私は子供の頃、お人形遊びをした記憶がありません 」ミオナが言った。
「 ミオナは60年前は 男だったからね。転生が近すぎて、子供の頃は 前の男性性の記憶が強かったんだろうね 」
「 前世の男性で生きた19歳までですよね?確かに自分は男だと 何処かで思っていました 」

ミクは、人形をロッカーに納めると 更衣室を出て行った。
外の受付で、けたたましい声が聞こえ マダムがやって来た。


ザワザワザワ・・
ザワザワザワ・・

黒い影が霧のように・・ ドアの隙間から入って来た

ギィィィーーーーーーー!!!

金属板を爪で引掻くような 不快な耳鳴りが響き
鳩尾がキリキリと痛んだ。
私は彼等のカルマと繋がっていた。
部屋の片隅に蹲り ゾクゾクする悪寒に耐えていると

「 マリオンさん、大丈夫ですか? 」ミオナが声を掛けた。
「 ああ、ごめん・・暫くこうしてると治るから 」私は言った。
この世界は全てバイブレーションだ。

「 極なる者の自らが、内にバランスを取り戻す 」
ミクの時も、ミツコと会った時にも ヤツが・・ ルシフェルが 言って来た言葉だ。
痛みに耐えながら 思い出していた。

ラメド・・ タロッシュⅩⅠ正義。理性と本能、精神と物質、対なる物とのバランスを促し
行動による審判の結果まいた種を刈り取る、魂の純化。
ヌン・・ ⅩⅢ死神。葬られた過去を思い出し 蘇る。

「 本質的な状態の光が、おまえをここに生かし思い出させている 」ルシフェルは言った。

「 11と13、誕生日だ 」私は笑った。
人の誕生日はある意味 魂を標す刻印なのかもしれない。
「 極なる者の自ら ・・ 」心の中で繰り返した。

感じる痛みは 媒介的に他者を理解する為に
他者を理解する事は 媒介的に本質的な自分を理解する為に
ここでは いつも何かの媒介を通してしか、理解する事が出来ないのだ。

ここは、意識の闇の世界
外に見える 愚かさ 情けなさ 苦しみの中に
本質としての自分という状態で感じられるか
それが鍵となる。
愛と光は「自らの状態の事だから」

闇では闇と共に・・
闇が深いほど 光は見えて来る。

バン!ドアが開いて、ミオナが入って来た。
「 大丈夫です。マダムはもう帰られました 」
「 可笑しいよね、左右違う靴を履いて来るなんてさ 」モーリィが言った。

「左右が違う靴・・ ?」
「 はい、よっぽど慌ててたのか・・ マリオンさん顔色が悪いですよ 」
鏡に映った私の顔は、青白くまるで死人のように見えた。

左右が違う靴を履いて・・ 異なるバイブレーションとの均衡が始まった。
作品名:ゾディアック 10 作家名:sakura