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ゾディアック 10

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映画館は、現世で演じているテーマを、観客は私達の意識を、出火元の美容院は
高次元の錬金を、それぞれ表していた。
「 カルマに感染し続けて来たマインドと戦い、人が変われるには・・
高次を信じろということ? マインドに囚われ ゾンビ化した人間を相手にせず 」

「 頑張るよ・・ガブリエル 」私はミオナを抱き締めた。
「 はい・・?? 」ミオナは答えた。


その時、携帯の着信が光った、ユシュリの妻デミからだった。
「 マリオンさん、お話しがあるの。帰りに寄ってもらえるかしら・・ 」
「 うん、分かった 」私はデミに言って電話を切った。

「 ねえ、これ見て下さい・・ 」突然ミクが声を掛け、
差し出した携帯画面を見ると、人形の写真が映っていた。

「 どうしたのこれ 」
それは、金髪の少女が持っていたブルネットの人形にそっくりだったが、髪は金色だった。
「 買ったんです。可愛いでしょ 」ミクは嬉しそうに笑った。

ミクの顔に、過去世の軍服の女性の顔が重なって見えた。
彼女は、アニムスに抑圧された 心を取り戻そうとしていた・・
一緒に出したタロッシュ カップの6、過去世のマインドの森へ少女を迎えに。

「 でもこれ、ブルネットじゃないんだね 」私はミクに聞いた。
「 ・・金髪がいいんです 」ミクは答えた。

少女が持っていたのは 憧れの女教師に似た ブルネットの人形だった。
しかし、パイプオルガンの音と共に現れ ミクを苦しめる幻視は、金髪の女性・・
パイプオルガンは、モーリィの過去世 ブルネットの女教師が弾いていた。

「 そうか!ミクの幻視に現れる金髪の女性は、女教師に投影したミク自身の姿だったんだ! 」
私は言った。
「 ???? 」
「 ミクに今度、ブルネットの人形をあげるよ 」私は言った。
「 えー本当ですかぁ?どんなのどんなの? 」ミクは嬉しそうだった。

パタン・・・ 静かにドアを閉める音がして
スタッフ達は、異様な私達には触れず そっと・・部屋を出て行った。


~ 72 ~
 

街に入ると 実家に灯りがついているのが見えた。
「 何年ぶりに見る明かりだろう・・ 」私は嬉しくなった。
きっと母も喜んでいる、あの家には懐かしい思い出がいっぱいだった。

「 あ、マリオンさんお帰りなさい。お疲れの所を寄って頂いてありがとう 」
玄関を開け、デミが出て来た。
「 それで・・ お父様には話して頂けたかしら 」デミは言った。

「 ここに住む事は了解済みだから、大丈夫だよ安心して 」私はデミに言った。
「 ええ、それは感謝してるわ。・・お父様代議士だし、お金の方も・・援助して下さるかしら 」
「 うーん、それは・・ 」言いかけた時、フラッシュバックが起こった。

眩しい光の中、宮殿の華やかなサロンに ひときわ美しい音色が響き渡っていた。
チェンバロを弾く若者に誰もが釘付けになった。
部屋の片隅には、宮廷女官に上がったばかり若い娘がうっとりと
その音色に聴き入っていた。

彼女は貧しい家に生まれたが、やっと憧れの宮廷専属の女中になれたのだった。
華やかな貴婦人達や煌びやかな装飾品に囲まれたお城の生活は彼女の夢。
いつか自分も・・何処かの男爵に見初められ、そっち側の人間に・・
贅沢な生活をする事こそが、彼女の願いだった。

その娘は、前世のデミだった。
チェンバロを弾く若者は、演奏会で宮廷に出入りする内に
この女中の娘と仲良くなった。

「 男爵、素晴らしい楽奏でしたわ!美しい詩と甘いメロディ
ご自分でお作りになったんですの?」伯爵夫人が声をかけた。
「 はい、奥様をイメージしてお作りしました・・ 」
若者は婦人に恭しくお辞儀をして言った。
そして、頭を下げたまま 女中にウィンクをした。

宮廷の裏庭で2人はいつも会った。
「 あの楽奏は 君の為に作ったものさ 」若者は言った。
「 まあ、嬉しい!美しい曲でうっとりしたわ。でも・・あなたを男爵って、
あの伯爵夫人は言ってたわ 」前世のデミは言った。

「 そうだよ。私は一応男爵さ、親父からの世襲でね 」若者は笑った。
デミの目が輝いた。
「 まあ、素敵!素敵だわ!!いつか私をあなたのお城に連れて行って下さる?
いつか・・ 」
「 お姫様、あなたの心のままに 」
ロマンチストな吟遊詩人のようなこの若者は、
前世のユシュリだった。

バッ・・! 眩しい光と共に 前世のビジョンは消えた。
「 いつか、代議士のお父様のように・・ 」デミが言った。

「 贅沢がしたいの? 」私は聞いた。
「 でも・・親父も、代議士とは名ばかりの・・
田舎で必死に生きている、ただのじーさんだよ。
生活を変えるしかないよ、デミ 」私は言った。

「 ・・・ 」デミは黙っていた。

イツカ・・ キット
ワタシモ ソッチガワノ ニンゲンニ


黒い影が 背後で燻り続けていた。


~ 73 ~

 
ギィーー・・ ギィーー・・  ・・ギィー

風が・・古戸を揺らす音?
暗い夜の森に 家が建っている。

ここは・・ 魔女と呼ばれた時の家?
それとも・・ ユシュリと逃げ込んだ野守りの小屋?
風に揺れる 壊れた戸の入り口に立って、暫く考えたが
思い出せなかった・・

遠い過去世のマインドの森に棲む 誰かの家
私は戸を開けて中に入った。

ギィーーー・・
軋むドアを大きく開けると、奥にポウッとランプが灯り
ベットとキャビネットが見えた。
それは見憶えのある風景・・ 今の私の部屋だった。

ベッドの側にはミクの前世の 金髪の少女が立っていた。

ネエ・・ ミセテ
ワタシノ オニンギョウ


「 ああ・・ 今日あげる約束をしたブルネットを見に来たの? 」
私は、キャビネットを開け、子供の頃に持っていた人形を探した。
「 確か・・ あったと思ったんだけど・・ 」
キャビネットの奥の・・ 遠い記憶を探っている間
金髪の少女は、じっと私の側に立って待っていた。

ネエ・・ ハヤクミセテヨ
アンタノ・・ カルマ


少女がそう言った途端、ギィィィーーーーーーー!!!

突然、錆びついた鉄戸の軋む音のような悲鳴が劈き
部屋は暗黒の炎に飲まれていった。
ゴフッ・・ ボタボタ・・
真っ黒な血反吐が床に落ちた。

鳩尾の辺りから黒く焼けながら、
私の腕や身体は 見る間に煉獄の炎に包まれて
周りには凄まじい阿鼻叫喚がこだました。

そして、それは現れた・・


オノレ・・ ユルサヌ!!!
ジゴクノソコマデモ・・
カナラズ、カナラズ!!!

私の心は、激しい憎悪に支配された。
目の前に・・ 小さな少年の亡骸が転がっていた。
私を庇って、槍で突かれた・・ユシュリの手はまだ温かく
見る間に、握った手の力は失っていった。

「 ユシュリーーーーッ!!! 」

バッ・・眩しい光に包まれ、花びらが・・ 雨のように舞い散り
桜の木の下 幸せの陽だまりの中に、母とユシュリと小さな私が笑っていた。

カカサマ・・ アニサマ・・


涙で霞む視線の先には、巫女装束の女が立ち去って行く姿が見えた。


ユルサヌ・・ ユルサヌ!!
カナラズ、カナラズ!!!

作品名:ゾディアック 10 作家名:sakura