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化け猫は斯く語りき

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 ざわと木々が揺れ、鳥属はバタバタと慌しく飛び立ち、遠くから響く犬の遠吠えに、放し飼いの猫が過剰に反応して鳴く。
 ナァァゴォ! にやぁぁぁぁごぉ!
 自動車から降り立ったのは人間の女人であった。蒼白な顔面からは己が引き起こした事態を十二分に把握している様子が見て取れ、早くも自責の念に押し潰されんばかりであった。
 ナァァゴォ! にやぁぁぁぁごぉ!
 ナァァゴォ! にやぁぁぁぁごぉ!
 塀一つ向こうの庭でやたらと吾輩を威嚇してくる猫属がいたのであるが、吾輩はそれよりも女人の取った行動に目を奪われていたのである。
 その女人はただの抜け殻となった吾輩の残骸を自らの服が血で穢れる事に瞬息の躊躇も見せる事なく抱き上げたのである。昨今では滅多に見ることの出来ぬ心優しき女人であるようであった。
 ナァァゴォ! にやぁぁぁぁごぉ!
 ナァァゴォ! にやぁぁぁぁごぉ!
 ナァァゴォ! にやぁぁぁぁごぉ!
 吾輩はその女人にしばしの安息を求めることに決め、新たに再構築した幼き猫属の肉体と共にその場を去ったのである。

 ナァァゴォ! にやぁぁぁぁごぉ! ナァァゴォ! にやぁぁぁぁごぉ!
 ナァァゴォ! にやぁぁぁぁごぉ! ナァァゴォ! にやぁぁぁぁごぉ!
 ナァァゴォ! にやぁぁぁぁごぉ! ナァァゴォ! にやぁぁぁぁごぉ!

 去り際に最後まで吾輩を威嚇し続けていた猫属の主であろう苛立った女人の声が吾輩の耳に微かに届いたのである。

「猫のタマ!! シィィィー!!」


  ― 『猫の魂』 了 ―
作品名:化け猫は斯く語りき 作家名:村崎右近