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愛を奏でる砂漠の楽園 04

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 シナンの言葉が流れ込んで来た耳が熱い。それだけで無く、心がどうしようも無い程に温かくなっている。
 シナンは今確かに、自分の事を愛していると言ってくれた。
 何度もシナンの言葉を反芻する事によって、目頭が熱くなり瞳へと溢れた涙を止める事が出来ない。
「何故そこで泣くんだ?」
「……まさかシナン様から、そんな言葉を聞く事ができるとは思っていなくて」
「何故そんな風に思うんだ?」
 心外であると言うような表情へとシナンはなっていた。
 感情を抑える事ができなくなっているユスフは、今まで心の奥底へと隠していた言葉をそんなシナンへと告げる。
「私の事を王から払い下げて貰うとおっしゃっていたというのに、王から払い下げて貰おうとなさいませんでしたから……、本気では無いのだと思っておりました」
「……俺がお前を王から払い下げて貰わなかったのは、お前を危険に晒したく無かったからだ」
 そんな言葉の後、シナンは「ハムゼにいつも言葉足らずだと言われているというのに、またやってしまったようだ」と小さく呟いた。小さな子供のようなシナンの姿を見る事により笑いが込み上げ、ユスフはついに小さくではあったが息を吹き出してしまう。
「こんな時に笑わなくとも良いだろ」
 不機嫌な表情へとなったシナンの姿を見て、ユスフは更に笑ってしまう。その時、以前同じような場面があった筈だという既視感へと襲われる。
 あれは確か、出逢ったばかりの日であった筈だ。
 その事を思い出す事によって、ユスフは不意にある事へと気が付く。シナンへと惹かれる切っ掛けとなったのは、あの時の出来事なのかもしれないという事である。
 笑みを消し去ったユスフは、頬を包み込んでいる手に手を重ね、哀願するような表情を浮かべてシナンの顔を見上げる。
 何を欲しているのかという事を察してくれたのか、シナンの顔が徐々に近づいて来るのを見て、ユスフは瞼を閉じた。
 唇に触れる柔らかな感触。
 それはユスフにどうしようも無い程の幸福感を与えるものであった。それを更に欲するかのように、ユスフがシナンの腕を掴んだ時、強い風が吹き荒れる。
 風が止み二人の元へと降り注いだのは、周りにある木々の葉だけでは無かった。芳香を放つ色鮮やかな花も二人へと向かって降り注いでいた。





 鮮やかな花は、まるで二人のこれからを祝福するもののようであった。
終幕