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ミステリー短編集  百目鬼 学( どうめき がく )

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「おいおい、書いてくれるじゃないか、実にオモレー!」
 急遽本事件に駆り出され、現場検証から戻った百目鬼刑事、デスクに置かれた夕刊紙を一読し、ププと吹き出す。
「刑事、不謹慎ですよ。私たちはこの不可解な事件の解決を任されたのですから」
 部下の芹凛こと芹川凛子刑事が妖魔の形相で睨み付ける。

 確かにその通りだ。百目鬼の長年の勘からすれば、この事件は色恋沙汰よりもっと深い闇がありそうだ。そんな疑念を芹凛も持っているのか、オヤジに負けじと……。
「彼らのオフィスは15階ですよね、なぜそこには止まらないエレベーター・F号機内で殺人事件は起こったのでしょうか? いえ、あの縺れから見て互いに殺し合った、もしそのように思わせる偽装をした犯人がいたとしたら、犯人の狙いは15階は無関係、そこでは犯行が行われなかったと強調したかったのではないでしょうか」

 芹凛のなかなかの読みだ。百目鬼はしばらくこれに沈思黙考、といえば格好良いが、芹凛が「寝てるのですか?」と声を掛けると、おっと目を開き、少し首を傾げながら次の捜査方向を言い放つ。
「俺は二流だからよくわかるんだ。花形と青夜のような一流に出くわすとムカッとくるんだよなあ。そう、俺のように僻(ひが)みっぽいヤツが身辺にいるかもな、さあ当たってみよう」