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ミステリー短編集  百目鬼 学( どうめき がく )

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 梅の花がちらほらと咲き始めた。時節は春間近、気持ちが少々華やぐ。
 それは犬とて同じこと。鎖から解き放たれた柴犬が、以前から余程気になる物があったのだろう、『あいうえおの館』と呼ばれる小さなアパートの、裏手にある雑木林に一目散に駆けて行った。

 しばらくして、犬はドヤ顔で、骨一本銜えて戻って来た。
 鶏にしては太過ぎる。飼い主はびっくりし、交番へと届けた。

『お手柄ワンちゃん、好物の骨をもらってご満悦!』
 三日後、こんな見出しで、ご褒美の骨を口一杯に銜え、やっぱりドヤ顔の柴犬。そんな記念写真がユーモラスで、世間の喝采を浴びた。

 しかし、報じられたニュースは大事件。
 犬が藪から持ち帰った骨は、死亡推定時期が半年前の若い女性のものだった。すぐに現場検証が入り、刃物傷が残る骨も発見された。
 念のため周辺を掘り起こしてみると、さらに白骨化した女性の二遺体が現れた。検死結果、いずれも同時期の死亡だった。
 まさにこれは連続殺人事件。当然百目鬼刑事も、部下の芹凛こと芹川凛子刑事も捜査に加わった。