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ミステリー短編集  百目鬼 学( どうめき がく )

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 さすが百目鬼、この鋭い推理に芹凛は感心した。
 されど基本的なことがわからない。「なぜイズミが犯人でないとわかるのですか?」と直球を投げた。この問いを真正面で受けた百目鬼、あとを続ける。
「草むらの中で光ったユーリンのスマホ、その着信はイズミのケイタイからだった。もしイズミが犯人だとしたら、すでに亡くなり、草むらに転がるユーリン、そんな女になんて電話しないだろ。誰かがイズミのケイタイを取り上げ、蜻蛉が易々(やすやす)と遺体を発見できるように、そのタイミングを計って掛けたんだよ」

「じゃあ、平貴家を守ろうとする村人の誰かが……、いや犯人がってことね」と芹凛は一旦頷くが、「蛍子は別名、夜光姫と呼ばれてるらしいわ。そのせいか、草むらのスマホまで光らせるのだから。こんな哀れな平家の落人のために、このままそっとしておいて上げるのも良いかも」と感傷の言葉を漏らしてしまった。

 これに百目鬼が鬼の目をギョロッと剥いて指示を発する。
「リアルに戻れ。今夜は闇夜、だから夜光姫がよく光って見えるはず。さっ芹凛、着いてこい、蛍狩りに行くぞ!」