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ミステリー短編集  百目鬼 学( どうめき がく )

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 ユーリンは覆い茂った草むらの中で、舶来の皮ベルトで絞殺されていた。
 そこには犯人の指紋が残され、吃驚仰天(きっきょうぎょうてん)のことだが、その指紋はイケメンで、現在巷で一番人気の平(たいら)イズミのものだと判明した。
 さらに蜻蛉が見たという夜に光った物は、近くに捨てられたユーリンのスマホであり、それが着信したためだとわかった。

 ユーリンと平イズミ、芸能界では訳ありの仲との噂がある。そんな二人の密会デートで、この蛍舞う幽玄の世界を訪ねたのだろう。
「有名人だと前もって聞いていましたので、まず私の家でおもてなしをさせてもらいました。それから暗くなって、仲良く川へと出掛けて行かれましたわ」
 蜻蛉が二人の行動をこう証言した。

 そして他に何人かの村人たちが口々に、最初腕を組んで歩いてらっしゃったけど、途中から激しい口論になったようで、男性が女性を無理矢理引っ張って橋を渡って行かれました、と話した。
 もちろん捜査本部は平イズミの行方を追った。しかし、イズミの姿はその夜から忽然と消えてしまったのだ。