ミステリー短編集 百目鬼 学( どうめき がく )
「私たちの再会に、乾杯!」
藍沢蘭子(あいさわらんこ)の発声で始まった小さなパーティ、それは高峰秋月(たかみねしゅうげつ)の個展会場での二人の再会が切っ掛けだった。
「蘭ちゃんじゃない、ホントお久しぶり。見に来てくれたのね、ありがとう」
幻想的な日本画を得意とする秋月、最近巷(ちまた)でもてはやされてる。
「得意なイマジナティブなタッチ、ますます磨きがかかってきたようね。おめでとうございます」
朝靄(あさもや)に消え行く淡香色(うすこういろ)の月に、目が釘付けとなった蘭子、秋月に背を向けながら祝った。それからくるりと踵を返し、「ねえ、学生時代に、私たちバーベキューしたでしょ。また山の、私の家に四人集まらない?」と誘う。
思わず懐かしさが込み上げた秋月、「もちろん寄せてもらうわ、大輝(だいき)を連れてね」と二つ返事でオーケーを出した。
こうして、高峰秋月と会社経営する夫の大輝、そしてホスト側の蘭子と夫の藍沢伊蔵(いぞう)、この二組の夫婦が集った。
作品名:ミステリー短編集 百目鬼 学( どうめき がく ) 作家名:鮎風 遊