小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

愛を抱いて 16

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

「1回休んだからって、単位なんてそう簡単に落とせるものじゃないさ。」
世樹子は少し笑った。
「変な云い方ね…。
でも鉄兵君に丸1日サボらせちゃったら、私何か済まないわ。」
「済まないのは、お互い様さ。
ただ、俺は1人でも映画に行くぜ。
もう決めたんだ…。
伊勢丹が休みだったのが、いけないんだ。
悪いのは、伊勢丹さ。」
世樹子は笑った。
「そうね…。
伊勢丹のせいね…。」

 ロード・ショーを観終わって、二人はブラブラとアルタの方へ歩いた。
新宿駅の北口広場で、プロのバンドがストリート・コンサートをやっていた。
ボーカルのコニーという女が、「キッスは眼にして…。」と唄っていた。
街頭でのミニ・コンサートを最後まで観た後、しばらくウィンド・ショップを楽しんだ。
それから二人で食事をした。
「あら、もうこんな時間…。」
世樹子は腕時計を視ながら云った。
「今日は時間の経つのが速いわね…。」
色白の彼女の肌は、もう夏の日焼けがすっかり褪せていた。
「考えてみれば、一日中二人でデートしてたみたいね。」
「みたいじゃないさ。
それに、一日はまだ終わっちゃいない。」
「どういう事…?」
セミ・ロングの彼女の黒髪が揺れた。
「君は、よく六本木へ踊りに行くのかい?」
「よくでもないわ。
鉄兵君達に比べれば、たまによ。」
彼女の瞳には輝きがあった。
「俺達はこの前、随分久しぶりにディスコへ行ったんだぜ。」
「本当? 
そう言えば、この頃はあまり行ってないって云ってわね。
もう飽きちゃったんでしょ?」
「そうじゃなくて、一晩踊ると次の日酷く腰が痛むんだ。」
世樹子は口に手を充てた。
「どんな店へ行ってるんだい?」
「『マジック』も好きよ。
後は、『マハラジャ』とか…。」
「もう一度、君とチーク・ダンスがしたいな。」
「…あれは、一夜の過ちよ…。」
「そうかな…? 
ねえ、ゆうべあまり寝てないだろうけど、これから踊りに行く元気はあるかい?」
「踊りに…?」
彼女は微笑んだ。
「いいけど、腰は大丈夫…?」


                          〈三二、木曜日のデート〉


作品名:愛を抱いて 16 作家名:ゆうとの