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ガガーリン
ガガーリン
novelistID. 50570
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岩窟の秘石

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よく聞いてください。四次元では四次元的な存在が四次元的に、私たちを扱っているように思いませんか。例えば、私たち三次元の人間機械が二次元の世界である絵を自由に描くように。そして四次元のさらに上には、その次元でもその次元的存在が、その次元的に私たちを捉える。こうなってくると、この世の、目に見えるもの、手で触れるものがすべてだなんて、それこそ妄想になりゃしませんか。だから私は、この「何か」が私を、それこそあなたが今、しきりに求めているまさにその「愛」で愛してくれている、と思っています。しかし、言っときますけど、この世の宗教っていうものには、くれぐれもご注意なさったほうがよろしいですよ。大事なのは、「誰か」ではなく、「何か」があなたを愛しているということなんですよ。
山内は、この物質世界がすべてではなく、さらに高次元の存在が、山内自身を「愛」しているということなのか、としばらく思い巡らした後、何か心のなかで大きく膨らんでいくものを感じた。では例会での最先端の研究をしている高名な教授が言ったこと、つまり「孤独」の特効薬としての「愛」はまずは、「誰か」から与えられる必要がある。つまり愛してくれる「誰か」を、経由する媒体として必要とするというのが現段階での研究の結論であるということ、は何だというのか。そして今、目の前の隠者が語ったこと、つまり、「何か」が愛してくれている、しかも物質界の三次元の存在ではない、さらに高次元の「何か」が私を愛してくれている、というのはどういうことなのか。
放心してしまっていた山内は、気が付いた時には道路脇に出て、電動タクシーが止まるのを待っていた。しかし山内は、これまでの凡庸な山内ではなかった。山内は、あの穴で出会った隠者の存在の輝きと同じものを、その全身から放っていた。山内は心の中で腹を決めたかのように、視点を一つも揺るがすことなく、一点を見つめていた。帰宅した山内は「孤独」と「愛」について、岩窟の穴のなかで出会ったあの隠者の語った言葉を一言一句、もらすことなく、次の例会での発表のために研究論文にまとめたのであった。

作品名:岩窟の秘石 作家名:ガガーリン